はらい師演じた短編映画がふくおか国際映画祭入賞と脚本賞 書道家、雅葉さん熱演【山陽小野田】
山陽小野田市の書道家、雅葉緑(がよう・みどり)さんが主演と題字の執筆を務めた短編映画「椿」が、ふくおか国際映画祭短編映画コンペティションで国内外200以上の作品の中から入賞と脚本賞に選ばれた。7日に福岡市の福岡アジア美術館で上映される。 物語の舞台は下関市豊浦町。はらい師の女性2人が、ある男性から「廃虚となった映画館に取りついた叔父の思念をはらってほしい」と依頼を受け、海辺の小さな町を訪れるというあらすじ。ホラー要素を含んだ約20分間の作品となっており、雅葉さんははらい師の一人を熱演した。 劇中では、筆を振るうなど書道家の本領を発揮する場面が多い。物語の佳境で共演者の体に写経を書いて除霊するシーンの撮影では、肌に墨を乗せるという慣れない状況に加え、自然光で撮るために日没までに書き上げなければならなかった。演じた役の冷静沈着なイメージを守るため、平然とした表情を保つ苦労も語った。「演技は初挑戦。普段の書道パフォーマンスにはない緊張感があったが、終えてみると楽しいという感覚が大きい」と満足感をうかがわせた。 物語の核となる廃映画館は、同町湯玉で実際に60年近く営業していた「湯玉映劇」。取り壊す前に何かしらの形で残したいという管理者の思いを知った同市出身の小田浩貴監督が、自身の作品に登場させた。体に写経を書く展開は赤間神宮を発祥とする「耳なし芳一」から発想を得た。「雅葉さんの書道パフォーマンスと廃映画館。二つの本物を残したくて脚本を書いた。はらい師というファンタジー要素を取り入れることで本物を際立たせた」とこだわりを語った。 出演者は雅葉さんを含めて6人。山陽小野田、下関、山口市と福岡県北九州市在住のアーティストで、ほとんどが演技初挑戦。小田監督は「仕事がある中で時間を割いてくれた。還元するためにも続編を考えており、山陽小野田市内でシナリオハンティングしているところ。地方から賞を取りたい」と力を込める。 映画のタイトルは、同町に名所があるツバキにちなんだ。題字を揮毫(きごう)した雅葉さんは「登場人物を取り巻く冷たさや寂しさを表現した」と話す。7日の上映会後は観客とのトーク会も行われ、撮影の思い出などを語る。