海保の精鋭部隊“空飛ぶ海猿” 基地の裏側を取材
日テレNEWS NNN
2022年、北海道・知床半島沖で起きた沈没事故。海上保安庁は救助の空白地帯をカバーするため、釧路航空基地に新たに機動救難士を配置しました。海保の精鋭部隊の基地の裏側を取材しました。 ◇ 氷点下の寒さが続く北海道・釧路市。雪道の先にあるのが第一管区海上保安本部の釧路航空基地です。 「降下準備よし!降下!」 去年4月に配置された機動救難士たちがヘリコプターの格納庫の片隅で降下技術を磨く訓練を行っていました。体を支えるのはロープ1本です。 上席機動救難士・神谷高仁さん(41)「一歩間違えば落下事故を起こす可能性があるので、非常に危険な降下手法」 機動救難士は、海上保安庁の全国10の基地に9人ずつ、合計90人しかいない精鋭部隊。海難事故でヘリコプターから降下してつり上げ救助を行うことから「空飛ぶ海猿」とも呼ばれています。 彼らが、釧路に配置されたきっかけは2022年4月に知床半島沖で発生した観光船沈没事故です。 当時、事故があった道東地域は機動救難士が出動から1時間以内で到着できない“空白地帯”で、初動の遅れが課題となっていました。 事故から1年後、救助体制強化のため、新たに釧路に配置された9人。現役の機動救難士だけでなく、過去の経験者も集まりました。沖縄・石垣島から異動した安岡さんもそのひとり。 安岡翔風さん(40)「(石垣では)暑さ対策を一生懸命考えた感じですけど、こちら(釧路)は完全にぬれないような素材のドライスーツで潜水訓練する。沖縄の人間は持っていない装備なので、(去年)4月から訓練した」 9人全員が観光船事故の初動対応や今も続く捜索活動に携わっています。 チームをまとめるのが上席機動救難士の神谷さんです。 上席機動救難士・神谷高仁さん「即戦力として機動救難士のスキルは高い職員が集まったという印象」 機動救難士の配置にあたり基地の空きスペースをフル活用して、出動への備えをしています。急きょつくられたプレハブにはドライスーツなどの装備が。中には、全国の別の基地から集めた資機材もあるといいます。さらに… 神谷高仁さん「ここに筋トレルームじゃないですけど、懸垂バーがあります。手作り感満載なんです」 天井の隙間を利用してつくられた懸垂のバー。 神谷さん「こんな感じで。限界までやる感じですね」 そして、筋トレグッズが並んでいたのはボイラー室。ボイラーの稼働音が響く中、日々、隊員たちは体力作りに励んでいるといいます。 釧路航空基地に機動救難士が配置され、道東地域がカバーできるようになりましたが、今、求められているのは海の救助だけではありません。 道東地域は「海溝型地震」の発生で津波による被害が想定され、陸上での救助対応も迫られているのです。 神谷さん「市街地はヘリコプターによってダウンウォッシュ(下向きの気流)状況を加味しないといけない。活動環境を見据えて、様々な想定をして訓練をしないといけない」 釧路への配置からまもなく1年。今後、海にとどまらない救助態勢の柔軟な運用が求められます。