【倒産増加】経営共同組織に活路を(7月18日)
県内で企業倒産が増え、今年上半期は過去10年で最多の件数を記録した。資金返済の負担や原材料費の高騰などが重なった結果とみられるが、経営環境が急速に好転する兆しは薄く、淘汰[とうた]がさらに進む懸念もある。地域の中小・零細企業は緩やかな共同組織を結成し、業務の効率化から事業刷新に至るまで一丸で取り組んではどうか。 東京商工リサーチによると、今年1~6月の県内の倒産件数(負債総額1千万円以上)は58件で、前年同期を18件上回り、3年連続の増加となった。新型コロナ対策で実施されたゼロゼロ融資の返済が重荷となり、仕入れ価格や人件費の高騰に耐えきれず存続を断念する事例が出ているという。従業員数別では、20人未満が54件と全体の9割を超えている。輸出関連を中心とした大手の業績回復が鮮明になっているのとは対照的に、中小・零細企業の苦境が際立っている。 収支を圧迫する歴史的な円安が収束する時期は見通せない。人手不足が深刻化する中、資金力のある大手が人材確保の面でも優位を保つ局面に変化はないだろう。「金利のある世界」の復活で、資金調達は厳しくなる。
さまざまな逆風を乗り越えるため、共同組織は共に知恵を出し合う柔軟な形態とし、それぞれの業界内、または業種間をまたいで設けるのも一策だ。例えば、賃上げには、価格転嫁を実現させ、原資を確保する必要がある。元請け大手との契約見直しに向けた交渉を成功させるため、他社の成功事例を幅広く共有する。さらに、協議の場には組織の仲間と共に臨み、幅広い観点から主張を届ける態勢を整えたい。 事務処理の一本化、ITなどに詳しい専門人材の共有化、税理士ら士業との共同契約は経費削減にもつながる。資機材の共同購入や相互利用、ひいては事業承継への協力など、連携できる分野は少なくないはずだ。中小企業家同友会、青年会議所、商工会議所・商工会など地域に根付く団体が共同組織立ち上げの基盤になる。 共同組織を企業存続のためばかりでなく、地域の新たな産業創出を目指す経済人のネットワークとして機能させることができれば、より理想的だろう。(菅野龍太)