雇用保険への加入条件が拡大される! 収入が少なくてもメリットはあるの?
保険料負担と給付内容
保険料の従業員負担は、2023年度では一般の事業で賃金の0.6%です。時給1200円で6時間勤務を週3回(月18時間)だと、月に9万円前後になります。賃金が9万円の月なら保険料は540円。あわせて標準報酬月額の15%ほどになる厚生年金と健康保険に比べれば、負担感は少ないといえます。 では、どのような時に役に立つのか、主な給付内容を取り上げてみます(※2)。 (1) 失業手当 正式には基本手当と呼びますが、離職理由、賃金、保険加入期間に応じて90日間から330日間まで支給されます。 (2) 育児休業給付、介護休業給付 育児休業期間中あるいは介護休業期間中に、休業前の賃金の約2/3または1/2が支給されます。 (3) 教育訓練給付制度 指定された講座受講や資格取得の費用を、一定割合まで補助します。 (1)は離職時だけですが、短時間のパートにも職探し中の収入支援があるのは心強いものです。 (2)は、雇用保険でもっとも身近な給付でしょう。育児と介護は、多くの方が直面する大きなライフイベントといえます。 (3)は、指定講座その他条件により受講費用等の最大20%から70%(上限あり)が支給されます。国家資格やIT系など、ステップアップをするための自己投資金に対する負担を軽減してくれます。 厚生年金や健康保険は、保険料は高いけれども日常の病気・ケガや年金で、必ずといっていいほどお世話になるのに対し、雇用保険については、必要時は威力があるけど、全員が必ずしも使うとは限らない、しかしかわり保険料が安くなっています。しかし、必ずではなくても、職探し中や育児・介護時の収入を補う手段があることを、頼もしく思うのではないでしょうか。
セーフティネットとしての安心感
月540円の保険料だと10年で6万4800円。育児休業や介護休業で給付を受ければ、すぐに上回る額です。休業給付がなくても耐えられる蓄えがあればよいのですが、そんな人ばかりではないです。また、このような公的給付を知っていれば、自分で準備する分は抑えられ、他の目的に振り分けられます。 雇用保険は、「労働者の」生活安定や雇用促進、そのための教育訓練など生活基盤を安定し支えるための保険です。残念ながら自営業者にはありません。つまり、雇用される人を守る制度なのです。 月10~20時間の労働に対する給付額でも、その重みが大きい方なら、雇用保険加入は大きな安心につながると思います。ただ、支給を受けるには一定の被保険者期間などの条件があります。保険料を払うなら、いざという時の支給条件もしっかり確認しておきましょう。 出典 (※1)厚生労働省 第189回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 (※2)厚生労働省 雇用保険制度 執筆者:伊藤秀雄 FP事務所ライフブリュー代表 CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
ファイナンシャルフィールド編集部