<公私で30回以上中国を訪問>ウォルズ民主党副大統領候補の対中観とは
米国の対中関係は悪化し、ブッシュ政権は各種制裁を課した。天安門事件後の教育交流継続は一部関係者を怒らせたが、ウォルズは、外交は人間関係など色々なレベルで出来、困難な時に中国の高校在学の経験をするのは重要なことだと信じていた。 下院議員として2007年ワシントン入りして以降、ウォルズは中国の劣悪な人権状況に焦点を当てる超党派議員と協働し、ナンシー・ペロシ団長のチベット訪問に参加した。ほとんどの政治家と同様、ウォルズは貿易政策、特に最恵国待遇と中国の人権状況を切り離すべきと主張していた。 天安門事件以降最恵国待遇は危機に瀕していた。しかし16年に習近平が権力を掌握した後、ウォルズは中国の人権状況は改善どころか悪化していると述べている。彼は、NGO、教会等の弱体化を指摘し、香港、新疆、チベットでの中国人の扱いに懸念を表明した。 * * *
切り込むべきウォルズの対中意識
米国大統領選挙は、バイデン大統領の出馬撤退以降、潮目は明らかに変わったが、現時点でも、いまだ接戦であることに変わりは無く、益々、選挙直前の経済情勢(失業率、ガソリン1ガロンの価格に代表される消費者物価指数上昇率等)の趨勢が大きな影響を与えるような気がする。 ただ、今まで注目外だったウォルズ民主党副大統領候補については、その立ち位置と背景を十分分析する必要があるのは確かである。そして、ウォルズ民主党副大統領候補の中国との関係の歴史は、相当特別だ。 ただ、この記事から判断するに、それは中国にとって必ずしも良いことでは無いように見られる。知れば知るほど、人権状況の劣悪さを嫌悪する、良く知っているだけに、ウォルズの対中強硬姿勢は筋金入りだと思いたい。 ただ、まず気になるのは、彼が中国の「何に」魅せられて、30数回の訪中を繰り返したのかだ。この記事がその点に切り込んでいないのは残念だ。 松尾文夫著『アメリカと中国』(岩波書店、2017年)という力作を読んだことがあるが、両国は、お互い大国としてのDNAを持ち、その点で相手を認めており、表面的緊張関係とは別に、教育や宗教等、脈々と続く底流の「共生」関係があることを、米中関係を判断する際に見過ごしてはいけない、ということが主題で、それを丹念な取材に基づき、歴史的に説き起こしているものだ。元共同通信記者の松尾氏が、長年追ってきた主題で、80歳を超えてから過去の蓄積をまとめ、最新の取材結果と共に出版されたものである。