私的整理による経営再建へ どうなる山形屋(前編)
鹿児島テレビ
特集「今、鹿児島で」。経営難に陥っている山形屋は、取引先金融機関との5月28日の会議で、事業再生の計画案が承認され、これから経営再建に向けた計画が進みます。 「今鹿児島で」のコーナーでは、28日と来週の2回に分けてこの山形屋の再建について考えます。1回目のきょうは山形屋が苦境に立たされた背景、そして復活の鍵を握る事業再生ADRとは? (5月10日の放送)鹿児島市の老舗百貨店山形屋ですが、経営が悪化したため、金融機関の支援を受けて経営再建に乗り出したということです。 5月10日、県内を駆け巡った山形屋の経営悪化のニュース。県内を代表する老舗百貨店の窮状は県民にとってまさに寝耳に水の出来事でした。 「まずびっくり。まさか山形屋がと思って」「びっくりです。初めて聞いたからまさかという感じ」 江戸時代の中頃、山形県生まれの商人が現在の金生町に呉服店を構えたのが始まりとされる山形屋。1917年には株式会社化され、日本で3番目の百貨店として営業を開始しました。これは1984年の2号館のオープンの日の映像です。当時のインタ当日の入店者は15万人にのぼりました。 定期的に開かれる催事も人気を集め、中でも北海道物産店は山形屋の代名詞ともいえるものでした。売上高は順調に伸び1997年2月期にはおよそ680億円とピークを迎えます。 鹿児島の経済を牽引してきた存在ですが,そこから売り上げは減少に転じます。要因として挙げられるのは2004年のアミュプラザ鹿児島、2007年のイオンモール鹿児島などといった大型商業施設の県内への参入です。 さらにコロナ禍の2021年の売上高は前年を100億円以上下回る312億円に。ピークの半分以下に落ち込みました。売上減少に耐震工事などの設備投資も重なり山形屋を中核とするグループ17社が抱える2023年2月期の負債は総額およそ360億円に膨らんでいました。 老舗百貨店はなぜ、ここまで追い込まれてしまったのか?百貨店と地域経済の関係に詳しい神戸国際大学経済学部の中村智彦教授は。 神戸国際大学経済学部中村智彦教授 「今回のニュースを聞いて、『山形屋お前もかと』いうショックな気持ちもありますし反面、やっぱりなという気持ちもあります」 驚きながらも「やっぱり」と話す中村教授。指摘するのは全国の多くの百貨店が直面する課題です。 神戸国際大学経済学部中村智彦教授 「購買力がある若い方たちはどこへ出かけるかというと郊外のショッピングモール。さらにはコロナ禍を経て大きな減少を見せているもの、アパレル関係がなかなか売れないと。若い人たちは洋服もネットで買う。高級ブランドに関してもリサイクルということで、中古品に対しての抵抗感が若い世代に行くほど低い形になってきて、デパートの強かった部分が徐々に弱点になっているということが大きな原因として考えられます」 時代とともに変化する生活様式や買い物のスタイル。苦境に陥った山形屋が経営再建の方法として選択したのは、「事業再生ADR」という手続きでした。 国が認めた第三者機関が関与する再建手法で事業を続けながら再生の手続きを進めます。 関係者によりますと山形屋は、2023年12月までに事業再生ADRを申請し先月、取引先金融機関17社が集まった債権者会議で再建のための5カ年計画を提示したということです。その内容は山形屋や宮崎山形屋などを含むグループ17社の統廃合により、経営の効率化を図ること。メインバンクである鹿児島銀行からの2人を含む3人の出向者を役員に迎え入れること。そして、会長と社長を無報酬とすることなどが挙げられています。 中村教授は事業再生ADRによる再建は「必ず成功するというものでもない」と前置きした上でメリットとデメリットを次のように話します。 神戸国際大学経済学部中村智彦教授 「ADRをすることによって営業が継続できるということ、迅速な対応が可能になるということでメリットも大きいがデメリットとしては非常に厳しい監査が入る。経営者が無報酬で残るということですが、よく分かっている方が経営を継続するということで、経営や継続の点ではいいが、一方で、『今まで上手くいかなかったのに同じ方で大丈夫なのか』という批判も出てきます。巨大な赤字を積み重ねてきているのでこれをどういった形で整理するのかによって、色々なところに影響が出てくるだろうと思います」 28日の会議で山形屋の再建計画は承認され今後、実行に移されることになります。しかし、それは再建が保証されたことを意味するわけではありません。島根俯瞰全国では再建を諦め閉店する百貨店もあります。島根県を訪ねました。 「JR松江駅前にあるのが一畑百貨店です。2024年1月の閉店以降、建物は残されたままになっています」 2024年1月、島根県唯一の百貨店だった一畑百貨店が業績悪化を理由に姿を消しました。実は全国では2020年以降、百貨店が一つもない県、百貨店空白地域が増えつつあります。山形、徳島に続き3つ目となったのが島根でした。 苦しい状況に置かれる百貨店業界。来週は地域から百貨店が消えた島根のケースを通して山形屋が「生き残るために必要なこと」を考えます。
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