なぜドラマの原作改変が多く、アニメは少ないのか 「媒体の違い」だけではない?
アニメは原作世界の描写を重視する
改変を当然としているドラマに対して、現在のアニメは原作の内容を忠実にアニメ化する傾向が強くなっています。とはいえ原作に忠実な作品づくりは2012年の『ソードアート・オンライン』の成功が大きく、それ以前は改変するのが当たり前で、アニメ化された際に原作者が「こちらの要望をまったく聞いてくれない」「大事な部分を勝手にいじられた」と、悔しい思いをするのはむしろ日常茶飯事でした。 先日もドラマ界隈では『ACMA:GAME アクマゲーム』の原作者であるメーブ氏が、改変内容に苦言を呈していましたが、もし15年以上前にSNSが広まっていたら、アニメでも同様の事例が多発していた可能性は極めて高いでしょう。 アニメが原作を改変していた理由はいくつかありますが、特に「週刊少年ジャンプ」の作品でよく見られたのが、「アニメの内容が原作に追いついたので、アニメオリジナルを入れないと放送枠を埋められない」というものでした。 他の理由としては、もともとの原作だけでは尺が足りないパターンが挙げられるでしょう。現在放送中の『鬼滅の刃 柱稽古編』は典型例ですが、アニメオリジナルの部分で今後、死闘に身を捧げる剣士たちひとりひとりの掘り下げが行われています。最終決戦となる『無限城編』に向け、視聴者の感情を揺さぶる準備は着々と進んでいるようです。 また、脚本家はクリエイターであるため、自分で何かを作りたいという欲求を持っています。それが悪い方向に転じてしまうと、原作通りの内容ではなく「自分ならこうする! こっちのほうが面白い!」と手を加えていき、各所から修正が入らぬように、わざとスケジュールの〆切ギリギリに提出する……という例も目にしたことがあります。 そもそも、原作としてよく使われるライトノベルはテキストと挿絵、マンガは絵とセリフで構成されているメディアです。絵が動く動画と音声で構成されているアニメとは演出方法が違うため、忠実とはいえ完全に同じものを作るのは最初から不可能な話でしょう。重要なのは作品の骨子を理解し「魂」を継承することであり、今の多くのアニメ作品はそれができているからこそ、強い支持を集めているのではないでしょうか。
早川清一朗