県内を訪れる外国人が急増している。現在は会津地方の観光地が主な訪問先となっており、まずは周遊を全県に広げたい。東日本大震災と東京電力福島第１原発事故の被災地に足を運び、復興の現状を正しく理解してもらう取り組みは海外での風評払拭につながる。県が進める「ホープツーリズム」に積極的に取り込む体制づくりが必要になる。 　今年１～３月の外国人延べ宿泊者数（従業員数１０人以上の施設）は１０万６５９０人に達し、３カ月で昨年１年間の１８万６１６０人の半数を超えた。県によると、目的地は鶴ケ城、大内宿、ＪＲ只見線などが中心で、浜通りは徐々に増えつつあるという。国内ではインバウンド（訪日客）による「観光公害」が問題視される事例も出ている。住民の生活環境に十分配慮しながら受け入れを進め、地域活性化に生かしたい。 　復興の現在地を知り、教訓を学ぶホープツーリズムへの参加は昨年度、過去最多の３９６団体を記録した。案内人の説明を受けながら、１万６４７６人が浜通りを巡っている。東日本大震災・原子力災害伝承館（双葉町）、震災遺構の請戸小（浪江町）、浅野撚糸（双葉町）といった訪問先の一つに昨秋、福島第１原発が加わった。

　インバウンドの参加を促せば、１３年前の複合災害について見識を深め、地域再生の状況を肌で感じる絶好の機会となる。帰国後に正確な情報を発信してもらえれば、本県の環境の安全性への理解は一段と進むはずだ。 　特に、廃炉作業が続く福島第１原発の視察は有意義だろう。東電は事故発生後、すでに教育、医療関係者ら延べ約８千人以上を海外から構内に迎えている。こうした実績を生かし、一般のインバウンド向けに各プラントの現状や処理水排出の安全対策などを丁寧に説明し、疑問に答える時間を確保してほしい。 　被災地の抱える課題は地域ごとに異なり、時間の経過とともに刻々変化する。訪日客の受け入れ拡大という新たな取り組みを前進させるには、通訳の確保や案内人の育成、効果的な広報活動など臨機応変な対応と財源確保が欠かせない。政府は長期的な視点に立って関連予算を確保するなど、強力に後押しするよう求めたい。（菅野龍太）