のん「ずっと『悪いやつ』をやりたかった」 理不尽な相手には「その場で仕返ししたくなっちゃいます(笑)」
柚木麻子さんの同名小説が原作の映画「私にふさわしいホテル」が、のんさん主演、堤幸彦監督で27日から全国公開される。AERA 2024年12月23日号の記事より。 【写真】「まだ幼さが残る2016年の『のん』」はこちら * * * ――「私にふさわしいホテル」は、不遇の新人作家・加代子が権威主義の大御所作家や曲者の敏腕編集者を巻き込んでのし上がっていく、痛快な文壇エンターテインメントだ。 柚木:もともと東日本大震災復興支援のチャリティー同人誌「文芸あねもね」に寄せた短編でした。オール讀物新人賞でデビューはしたけど、原稿がなかなか載らないという時に、それをネタにして書いたものなんです。それこそ物語のように、山の上ホテルに自腹で缶詰めしていたこともあります。参加作家はR-18文学賞出身の方々が中心だったんですけど、「好きにやりなよ」ってみんな優しくて。自由に好きなものが書けて、初めて殻を破った感覚でしたね。 のん:加代子を演じてみて、とても楽しかったですね。彼女の思いっきり悪いところが好きなんですが、ずっと「悪いやつ」をやりたかったので、すごく嬉しかったです。天敵・東十条すらも味方に巻き込んでいくのがおもしろいなって。加代子は小説にかける情熱や目標に向かう気持ちだけは純粋で、そのためならいろんなことを厭わずにやってしまうと解釈していました。 柚木:その解釈で合ってます(笑)。加代子の年上の異性には食ってかかるところや悪だくみするところ、最後まで自分のことしか考えていないところが大好きですね。映画化にあたっても、お涙頂戴エピソードも恋愛の気配も一切ないところがすごくいいなと思いました。 ■皮膚感覚を研ぎ澄ます 同世代の作家仲間は、すぐ説教されるし嫌み言われるからってパーティー嫌いが多いんですけど、私は嫌な思いをするとしてもパーティーが好きで。いい服を着て、おいしいものを食べて、そういうことをおもしろく書きたいなと。文学ってホテルと密接な関係にあると思うんですけど、どのホテルも加代子のことを愛してるんですよ。加代子がやったことがうまくいくのは、全ホテルが味方をしてるからなんです。