センバツ高校野球 健大高崎、8強逃す 散発2安打、本塁遠く /群馬
第93回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)で、25日の2回戦に臨んだ健大高崎は天理(奈良)に0―4で完封負けし、8強進出を逃した。天理の主戦・達孝太(3年)の好投で、強打線が2安打に抑えられた。投げては、先発・野中駿哉(同)が一回の先頭打者から3連打を浴びるなど、二回途中で降板。続く今仲泰一(同)が相手の勢いを断ち切ったものの、投手3人で計11安打を許した。【川地隆史、辻本知大】 1回戦で2失点完投の好投を見せた高松将斗(3年)に代わり、野中駿哉(同)が先発した。本業は外野手だが、昨秋の関東大会では全4試合で先発。息子の登場に父克哉さん(53)は「私も甲子園を目指したが、果たせなかった。夢をかなえた息子がうらやましい」と感慨深げだった。 だが、野中は初回、ストライクゾーンに投げたシンカー系の球を狙われ、3連打を浴びて先制を許す。試合後、野中は「ボールが先行してしまった」と振り返った。 対する天理の主戦、達孝太(同)は193センチの長身から最速148キロの直球を投げ下ろす。だが、小沢周平主将(同)が「狙っていた直球が自分たちのスイングのさらに上だった」と語るように、三回まで無安打に抑えられた。八回に四球と堀江晃生(3年)の安打で1死一、二塁の好機を作ったが、打線が続かなかった。 昨秋の県大会と関東大会では、計10試合で15本塁打を放ち、チームの代名詞「機動破壊」に強打が加わった。アルプス席も一発を期待し、五回裏に伊藤翔哉(3年)の高く上がった打球がファウルになると、野球部の武原幸輝さん(2年)は「入ったと思った」とメガホンをたたいた。 それでも逆転を信じて応援団はブラスバンドの音源に合わせて演舞した。リズムよく太鼓をたたいてチームを鼓舞した佐々木琉生さん(2年)は「バッティングが持ち味のチームなので一気に逆転もあると信じて、思いを込めてたたきました」と語った。 4点を追う九回、女子マネジャーの角田ももかさん(3年)は両手を合わせて祈った。「最後まで仲間を信じていました」。最後の打者、森川倫太郎(同)が三飛に倒れると、「頭が真っ白になった」と肩を落とした。 試合後、整列した選手たちに、スタンドからは温かい拍手が送られた。小沢主将は「いい投手と対戦できたことが成長につながる。もっともっと練習して強くなりたい」と、夏の飛躍を誓った。 ◇健闘をたたえる ○…小沢周平主将(3年)らの担任教諭、佐々木雄司さん(50)は、監督を務める女子バレーボール部の部員とともに応援に駆けつけた。小沢について、「軽口をたたくけど、やる時はやる」と評価。甲子園に向かう前、クラスメートへのあいさつを促すと、小沢は「日本一を取ります」と語っていた。佐々木さんが「そんな簡単に言っていいのか」と聞くと、「優勝したら野球部に焼き肉をおごってください」と笑顔を見せたという。佐々木さんは試合後、「頑張った。ベストを尽くした。帰ってきたら、夏に向けて頑張ろうと声をかけます」と、ナインの健闘をたたえていた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇夏へ確かな手応え 健大高崎 今仲泰一投手(3年) 約半年ぶりのマウンドは、初めての甲子園だった。昨秋はけがに泣き、出場は県大会2試合にとどまったが、大舞台のこの日は2点を追う二回2死一、三塁のピンチで登板。後続を三振に打ち取り、六回までを2安打無失点に抑える好投を見せた。完封負けしたが、「緊張は一切なかった」と胸を張った。 最速146キロの直球を武器に、1年生の秋からベンチ入り。だが、昨夏の練習試合で肘を痛めたのを機に戦線離脱した。昨秋の関東大会でチームは連覇を達成。その様子をスタンドから見つめ、「春に向けて頑張ろう」と前を向いた。冬期間は走り込みを重ねて下半身を強化した。「くさったら野球をやめた方がいい」と歯を食いしばり、今年2月には直球の最速が143キロにまで戻った。 センバツ8強入りをかけ、迎えた天理戦。先発・野中駿哉(3年)から「ごめん」と、マウンドを託された。 「みんなに連れてきてもらった」という甲子園だったが、大阪在住の父章人さん(47)は息子の堂々たる投球に、「力を出し切れた」と目を細めた。「これから一戦も負けないよう、厳しく取り組む」。復活を遂げた本格派右腕は、夏に向け、確かな手応えをつかんだ。【川地隆史】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦第3試合 天理 110000200=4 健大高崎 000000000=0