先輩に怒鳴り散らされ水飲み禁止、衝撃のスパルタ応援練習は今 「今の生徒は強制しても…」高校の女子団長が感じる変化の兆し
改革進む練習
鍛錬に近い印象を受けた同校の練習風景。だが、かつての厳しい指導に比べれば随分と改革は進んだという。例えば水を飲めなかった以前と違い、足元に水筒を置いて約10分おきに水分補給していた。無理をせず列から離れて見学する生徒がいたり、表情がすぐれない新入生に団員が声をかけたりする場面もあった。 近年は応援団のあり方も見直しが進む。同校では各クラスから実質強制的に男子2人が団員に選ばれた仕組みを、2017年度に女子を含む希望制に変更。19年度に初めて女子が団長に就き、それ以降はほぼ毎年、女子の団長が続く。
「心をつなぐ行事」響く言葉を考え抜いて指導
山崎さんは「応援練習は心をつなぐ行事」と言う。一方で「今の高校生は嫌なこと、無意味と思うことを強制的にやらせようとしても目的を見いだせずついてこない」とも。「どのような言葉なら響くか、気持ちが伝わるか」―。市川さんや後輩団員と議論を重ねた。 20年度から昨年度は、感染予防のためオンラインでの指導や大幅な時間短縮がなされた。今回は団員も全員マスクを外し、5年ぶりの制限なしに。最終日は練習時間を40分から1時間に延長した。「全力を出し切れ!」「頑張れ!」と正副団長が叫び、歌声が合わさった。
愛校心や仲間意識を育てる
「『時代が変わりいろいろな意見や考え方があるが(応援練習を)受け継いでほしい』と卒業生に言われた」。山崎さんは最後、1年生の前でそう告げた。「応援練習は愛校心や仲間意識を芽生えさせる。それを乗り越えた君たちはもう立派な縣陵生です」 練習後にやっと相好を崩した1年生に感想を聞くと「10曲も覚えるのは無理と思ったが、いい経験になった」「先輩たちも一生懸命、丁寧に教えてくれた」「伝統に加われてうれしい」との声が。後日、1年生6人が入団して応援団員は15人に増えた。
コロナ前を知らなかったけれど
今の高校生はコロナ禍に青春時代が始まった世代。市川さんは「私たちもコロナ前(の応援練習)を知らず、不安があった」と打ち明けた。「今の社会や生徒に合わせて変えられるところは変えて、もっと良い魅力的な応援団を作ってほしい」。変化しつつも応援練習を含む伝統を受け継いでくれれば―。そう真っすぐな願いを込めた。