五月天、蔡依林…台湾の人気芸能人が続々と「統一支持」を表明!そのウラにある中国共産党「台湾社会分断工作」
テレビは中国の「カネ」を向いている
実は文化の分野における中国の攻勢の対象は歌手や俳優にとどまらず、映画監督や番組プロデューサーなども台湾では制作費に限りがあるため、市場が大きい中国に目が行きがちである。 特に問題だったのは、テレビドラマを制作するテレビ局だった。2012年、当時野党だった民進党に近い三立テレビで、10年間にわたって続いてきた人気評論番組『大話新聞』が突然打ち切りとなり、三立テレビに対して抗議電話が殺到した。番組の司会を10年間務めた鄭弘儀氏は降板の理由について、番組の中で「家族の面倒を見たい」と説明したが、本人はその後も別の複数のテレビ局やラジオ局で司会を務めており、メディア関係者の間で彼の言葉を文字通りに受け取る人はほとんどいなかった。 突然の降板劇の背景には、三立がテレビドラマの中国への販売を推進していることがあるとの推測が出ていた。同じ中国語が通じる中国市場は台湾の60倍の人口があり、経済も急成長していた。ところが鄭氏は『大話新聞』の中で、中国の人権問題や民族問題について歯に衣を着せぬ批判をしていたので、三立の経営者が中国の圧力に屈したとの見方が広まったのである。 鄭氏をよく知るメディア関係者は、三立の社長が幹部を通じ、鄭氏に対してウイグル独立、チベット独立、ダライ・ラマ、6.4天安門事件、ラビア・カーディル、法輪功などを番組で取り上げないよう要求していたと当時述べていた。 その後、三立のテレビ番組の中国進出はうまくいかなかったようで、鄭氏は6年後に三立の別のテレビ番組の司会者として復帰するのだが、もし中国当局が当時三立のテレビドラマを大々的に買い付けていたらと思うと背筋が寒くなる。 いずれにせよ、こうした「文化統一戦線」も中国共産党の重要な戦略の1つなのであって、中国の「文攻武嚇」の「文」には、「文章」だけでなく「文化」の意味もあることには要注意である。
田 輝(ジャーナリスト)