山﨑賢人以降、不在だった「実写化王子」を継承する23歳俳優。そのラブコメ的オーラとは
実際に見た高橋文哉
実は筆者は『からかい上手の高木さん』取材現場で高橋にちらっと遭遇した。取材部屋の外で待機していると、休憩中の高橋がケータリングスペースにやって来て、何ともさわやかに(でも慎ましく)コーヒーを注文していったのだ。 画面内の高橋も画面外の高橋も激しく可愛いエッセンスを放出(と同時に注入)していた。彼がコーヒーを注文する、すぐ隣のベンチに腰掛けた筆者が、思わず凝視寄りのチラ見を繰り返したのはどうか許してほしい。 その吐息は、リアルに薄桃色がかっていたと思う。今いる空間をそれとなく夢色の情景に染めてしまう人でもある。実際に見た高橋からそう感じた。そう、高橋文哉とは、現実と夢とをいとも簡単につなぎ合わせてしまう才能の持ち主なのだ。
山﨑賢人以降不在だった“きらきら映画王子”
現実と夢(二次元)をリンクさせる、その才能を生かさない手はない。もし高橋がラブコメ漫画を原作とする実写化作品が日本映画界の一大潮流になり、黄金期を迎えた2010年代中頃を生きる俳優なら、間違いなくきらきら映画作品で気を吐いていたことだろう。 現在、同ジャンルは、興行面で下火になり、日本映画シーンから薄れた感がある。それでもケータイ小説のヒット作を原作とした『交換ウソ日記』(2023年)で、(恋愛映画)初主演を果たした高橋が、ラブコメ的なきらきらオーラを全身から放っていた。 『オオカミ少女と黒王子』(2016年)を頂点に当時のきらきら映画を牽引したのは、実写化王子の異名を取った山﨑賢人だったが、山﨑以降不在だった“きらきら映画王子”の座は、高橋が継承するより他なかったとも言える。
実写化俳優を担う本気度
山﨑主演『オオカミ少女と黒王子』と高橋主演『交換ウソ日記』の比較で言うなら、きらきら映画にしては珍しい引きの画面を駆使した廣木隆一監督の演出が突出していた前者に対して、後者には映画的な背骨はあまり感じられなかったのは事実。 『オオカミ少女と黒王子』は、きらきら映画黄金期に生み出された偶然の傑作だったのだ。同作以降、めぼしい実写化作品が生まれていない現状を考えると、次世代の実写化俳優である高橋文哉によって新陳代謝を図ることはそれなりに有効だと思う。 志尊淳とTBSドラマ初主演を飾った『フェルマーの料理』(2023年)と最新主演ドラマ『伝説の頭 翔』(テレビ朝日、毎週金曜日よる11時15分から放送)は、ともに少年漫画が原作。 1000人のヤンキーたちを束ねる伝説の頭・伊集院翔とカツアゲされてばかりのいじめられっ子・山田達人が入れ替わり、高橋が一人二役で演じ分けている。 第1話ラスト、翔に破門された過去がある荒くれ者・金山大房(犬飼貴丈)に達人がボコボコにされたあと、大好きなキャラクター枕を抱いてわちゃわちゃするギャップ。それぞれのキャラと演技のバランスをうまく保つ高橋からは、山﨑以後の新たな実写化俳優を担う本気度が伝わる。 <文/加賀谷健> 【加賀谷健】 音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
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