<上海だより>“モノからコト”へ消費が変化?中国話題のワード「主題性」
THE PAGE
上海のレストランやカフェ、展示イベントなどの情報をWEBニュースで見ていると「主題性」という言葉がタイトルについていることが多いのですが、日本への中国人旅行客も“モノ消費”から体験型の“コト消費”に移ってきているという状況にも合わせて紹介したいと思います。
まず、今年の夏に学生を中心に若い女性の間で話題になっていた「LINE FRIENDS」展示イベントがありました。このイベントでは、LINEの各キャラクターに合わせ様々な装飾が家型の大ブース内の各部屋に施され、自撮りを楽しむことができました。実際に、WeChatという中国のメッセンジャーアプリでは、この展示イベント期間中に多くの自撮りが友人間にシェアされていました。
またイベント以外では、若者向けの多くの飲食店が、内装や盛り付けにおいて主題性が重視されています。特定のキャラクターや作品の世界観を主題にした店舗や、イギリスのベイカー街や海賊船をテーマにした店舗など様々です。 その中でも、「ZOO COFFEE」 という動物園テーマにしたカフェが急速にチェーン展開を進め、成功を納めています。元々は韓国発祥のカフェですが、2013年に中国へ進出してから、香港と台湾も含め、すでに200店舗以上の店舗数まで増えているカフェです。店内には大きな動物のオブジェが多く設置されており、確かにお母さんに連れてこられた子どもも楽しめるようなカフェです。
なぜこれほどまでに主題性が人気なのでしょうか。その理由としては、第一にわかりやすさがあるでしょう。中国に限らず日本やその他の国でも、コンセプトや理念などはやはり大事です。しかし、中国ではあまり細々とした理屈への反応が薄く、一言でまとめられ、一目でわかるような主題性が重要視されるのです。また、前述の通り「自撮り」要素も非常に大きな比重を占めています。
一方で、中国で流行する主題性が視覚的要素に偏ってしまい、それが表面的なものとして形骸化してしまっている状況もあります。イベントという意味では視覚的な趣向で十分ですが、飲食店となるとそうはいきません。しかし、ビジネス志向が先行してしまうのか、視覚的な内装や盛り付けばかりが先行し、本来は主であるべき味が置き去りにされてしまっている店も少なくありません。 また、そうした店ばかりが注目されるという悪循環も生まれてしまっています。メディアとしても画像映えのする店の方が紹介しやすく、また自撮りスポットを求める消費者の反応も良い主題性に重きを置いた店ばかりに注目するという事態が生じているのです。 中国人消費者に興味を引く上で、一時しのぎの策として主題性は大きな鍵となるでしょう。しかし、中国本土の市場が付け焼き刃の策に依存しないマーケットに成長するためには、目に見えない部分を追求せざるをえないでしょう。とはいえ、目に見える部分だけでも改善され始めている、そう捉えるとすれば、確実に成長は始まっているとも考えられるでしょう。