「事件はねつ造」証言も 捜査員が抱いていた“疑問” 「大川原化工機」国賠訴訟…27日に判決
日テレNEWS NNN
警視庁に逮捕され、その後無実が明らかになった機械メーカーの社長らが、国や東京都に損害賠償を求めた裁判の判決が27日、言い渡されます。その後の取材で、複数の捜査員が、当時から捜査方針に疑問を抱いていたことが分かりました。 ◇ 神奈川・横浜にある従業員90人ほどの中小機械メーカー、大川原化工機。液体を粉にする機械「噴霧乾燥機」の製造で国内トップシェアを誇ります。しかし3年前、会社は突然、ある“事件”に巻き込まれました。 大川原化工機 大川原正明社長 「もう逮捕された状態で、悪い会社というふうにレッテル貼りをされちゃうんですよね」 2020年3月、突如行われた警視庁公安部による強制捜査。あの「噴霧乾燥機」が“生物兵器に転用可能”で許可なく輸出したとして、大川原正明社長、輸出担当の島田順司さん、開発担当の相嶋静夫さんが逮捕されたのです。 3人は生物兵器には転用できず、規制の対象ではないとして無実を主張しましたが、起訴され約1年もの間、勾留されました。 しかし刑事裁判が始まる直前、検察が一転、異例の起訴取り消し。無実が証明されましたが、機械の開発者、相嶋さんは勾留中に胃がんが判明しました。 開発担当・相嶋静夫さん(勾留から8か月目・当時72) 「みなさん元気ですか。じいじはあんまり元気ないけど頑張ってるよ」 7回もの保釈請求が却下され、ようやく一時的な入院が認められましたがこの3か月後、疑いを晴らせないまま帰らぬ人になりました。 大川原化工機 大川原正明社長 「多分、相嶋さんの件も警視庁内部には伝わっていたと思うんですよね」 相嶋さんが入院したころ、会社にある1通の手紙が届きました。警視庁の判が押された差出人不明の手紙で、書かれていたのは、当時捜査に関わっていたある捜査員の実名でした。 「彼(その捜査員)は貴社側に立った見解を持っており、警察組織の意向とは関係なく自分の意見を貫くタイプの人間です。貴社が無罪になることと感じてはおりますが、もし裁判において決め手に欠ける状態であれば、ご検討ください」 大川原化工機 大川原正明社長 「警察からも応援してくれる人がいたんだなって」 捜査に疑問を感じていた捜査員は、ひとりではありませんでした。会社側の弁護士のところには… 高田剛弁護士 「この件(手紙)があった翌週くらいに電話が入ってきて『我々の中にも先生と同じようなことを考えているものはいます』と」 警視庁の内部からとみられる相次ぐ告発。それが初めて明るみに出たのは、社長らが捜査は違法だとして国と都を訴えた裁判でした。 ある日の証人尋問で証言台に立ったのは、当時捜査の中心メンバーだった警部補。質問に終始淡々と答えるなか、現職の警察官が事件は「ねつ造」だったと証言したのです。 弁護士 「事件をでっち上げたという点は否めないかと思いますが、違いますか」 捜査員 「ねつ造ですね。個人的な捜査員の欲だったと思っています」 なぜ、捜査を止めることはできなかったのでしょうか。 捜査員 「輸出規制のルールが曖昧で、上司がむしろチャンスだと思っていた。こっちで決められると。上からの強い圧力があったというよりは、上司たちの個人的な出世欲だった」 当時の捜査に関わっていた別の捜査員は、捜査の方針に疑問を抱いていた捜査員は自分以外にも複数いたと証言しました。 国と都は事件がねつ造との証言について、「個人の臆測で信用性が低い」などと反論し、裁判は今年9月にすべての審理が終結しました。 ◇ 大川原社長がいま一番求めているものは「謝罪」だといいます。 大川原化工機 大川原正明社長 「謝らないということは、同じことを繰り返すっていうことだから。我々としては少なくとも同じようなことは繰り返してほしくないですよね」 判決は27日、言い渡されます。