「本当にグッとくる」そいつどいつ・市川刺身が愛する映画(1)孤高の天才芸人…思春期の心に刺さった作品とは?
各界で活躍する著名人に、人生に影響を与えた映画をセレクトしてもらい、魅力を語ってもらうインタビュー企画。今回は『2024年 ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』で優勝したお笑いコンビ・そいつどいつのボケ担当、市川刺身さんが登場。映画にまつわるご自身の思い出と、好きな作品の魅力を語っていただいた。第一回。(取材・文:ZAKKY)
『ピンポン』(2002)
ーーー松本大洋先生原作の漫画であり、窪塚洋介さん主演の伝説の名作ですね。 「好きな映画は何? と聞かれたら、すぐに思い浮かぶ作品です。中学に入った頃、この映画が流行って、映画館で観ました。今でもそうですが、窪塚洋介さんが大好きで、とても面白くてハマってしまいました。でも、その後はどこで観られるか分からなくて。レンタル店に行けばあったのかもしれませんが(笑)。 当時、映画のホームページがあって、老女オババ(夏木マリ)が経営している『タムラ卓球場』が描かれていました。そこをクリックすると、少し本編の動画が観られたんです。それを何度も観ていました。もう更新されることはないのに(笑)」 ーーー初っ端から、中学生らしいエピソードですね(笑)。 「初めて観た時は単純に面白い映画でした。子供の頃に見た中では結構新しい手法だったと思います。冒頭のシーンでペコ(窪塚洋介)が橋の上で佇んでいるところを、警察官に話しかけられて、『俺、月にタッチするなんて目じゃない。アイキャンフライ!』と言って、橋から飛び降りるんです。 そこでSUPERCARの楽曲『Free Your Soul』が流れるのですが、その導入がカッコよすぎて。その曲は中盤のシーンでも挿入されるんです。その演出が、子供心に衝撃的でした。今ではよくある手法かもしれませんが。あと、ボケシーンがちょいちょいあるんですけど、そんなにいやらしくなくて、そこも好きですね」 ーーー本作におけるユーモア要素について、どう感じましたか? 「例えば、卓球部の顧問・小泉丈先生が、竹中直人さんの好演もあり、キャラの行動がいいボケ役になっています。ペコのライバルであるスマイル(井浦新)の才能を見出して、ちょっと調子に乗るのですが、そんな小泉先生とは別に、スマイルは部活には来ず、1人で練習しているシーンなどは、すごくセンスのあるユーモアだと思います。 最近の映画は、俳優さんが、わざとアドリブで笑かしにいっているシーンが多い気がします。悪いとは言いませんが、個人的に、ちょっと押し付けがましく感じてしまうんですよね」 ーーーなるほど。 「俳優さんを責めるわけではないのですが、あれって、お客さんの目の前でやっていないからできるんだと思うんです。目の前でやったら、スベったかウケたかわかるわけですから」 ーーーまさに、芸人ならではのご意見ですね。 「そういった視点でも、この作品は笑えるところは本当に笑えるところが素晴らしいです。ペコを初めとした誰かしらのキャラクターたちに、すっと感情移入できるところも魅力的ですね。 卓球がテーマのストーリーですが、スポーツでも何でも、スーパースター的な人というのは、現実には10割中2割ぐらいで、8割ぐらいは大体うまくできなかった人の方が多いわけじゃないですか。でも、結果ダメだった人にもスポットライトを当てているところが、素敵だなあと」 ーーー松本大洋先生の作品は、そのような描写が多いですね。 「そう思います。アクマ(大倉考二)というキャラクターが、スマイルの才能に勝てなくて卓球を辞めちゃうんですが、そういうところのリアルさも、本当にグッとくる作品なんです」 ーーー刺身さんは、学生時代、部活は何かやられていたのですか? 「中学生時代はソフトテニス部です。野球とサッカーとバスケット、ソフトテニスしかなかったんですよ。よく考えたらマジで意味わかんない(笑)」 ーーーなんで、それしかないんだよと(笑)。 「ええ。野球とサッカーって小学校の時からやってる人が多くて。だから、ソフトテニス部に入ったんですけど、同じラケットスポーツということで『ピンポン』は、そういった意味でもハマったのかなと」 ーーー松本大洋さんの作品は、他の作品もご覧になっていますか? 「漫画好きな姉の影響で、『GOGOモンスター』『鉄コン筋クリート』『青い春』など、全部読みました。入手困難な初期の作品も大人になってから、国会図書館で読みました(笑)。『青い春』(2002)の実写映画版も最高ですよね! 松田龍平主演で、ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)のサントラなんて、シビれましたよ」 ーーー刺身さんの世代としては、まさに青春ですね。『ピンポン』もそうですが、松本大洋さん原作の映画化は、ハズレがないですね。 「わかります! アニメですが『鉄コン筋クリート』(2006)のクオリティーも半端なかったですし、大好きです」 (取材・文:ZAKKY)
ZAKKY