「ぎゃぁぁっ!自販機の中に手が…」恐怖との邂逅から笑撃のラストに「この手絶対仲良くなれる」「かわいい怪異」【作者に聞いた】
たびたび怖い話の題材となる自販機。低く鳴り響くモーター音や暗くひんやりとした取り出し口は、やはりどこか不気味だ。今回は、そんな自販機の怪異を描いたさめこ(@SamekoShark)さんの「自販機と指」を紹介する。 【漫画】ジュースを取り出そうと自販機の取り出し口に手を入れたら、指を掴まれた⁉︎ ■自販機の怪異に、果敢に挑む女子高生 女子高生が自販機から飲み物を取り出そうとした瞬間、「ぎゃぁぁっ!」と悲鳴を上げた。なんでも取り出し口の中で手を握られたという。「怪奇現象だよ~」と怯える女子高生をよそに、冷静な友達はバッグに入っていたチョコをその手に差し出してみる。 すると、お礼に紅茶のペットボトルが返ってきた。その後も友達は検証を続け、ペッチャンコにつぶれた賞味期限切れのどら焼きを入れてみると――。 ■怪異との平和なやりとりが尊い 恐怖との邂逅から、徐々に笑いへと変わっていく本作に「おもしろい!」「この手絶対仲良くなれるやろw」などのコメントが寄せられた。そこで今回、作者であるさめこ(@SamekoShark)さんに本作の制作秘話を伺った。 自販機を題材とした本作、「自動販売機の取り出し口からお茶を取り出したとき、ふと『暗くて狭くてヒンヤリしていてちょっと濡れているところって、怪異とか幽霊が好みそうだよな』」と思ったことが制作のきっかけだという。 賞味期限切れのどら焼きを渡して「呪」返しに合うという笑撃のラストに、「もしや、こし餡派だったのかな」「ワンチャン『呪(まじない)』かもしれない…」と、読者の間で考察も盛り上がった。「呪」の真意について伺うと「賞味期限切れのぺちゃんこどら焼きを寄越されたことに対して、『ゴミ箱じゃねぇぞ!』の脅かしです」との答えが。 「お菓子を与え続けたら、選り好みするようにもなりそうですね。私自身文字を使わず絵面で畳み掛ける笑いが好きなので、それが表現できたのかなとホクホクしています。仮にお菓子ではなく、人体の一部などを与えていたら、笑えないラストになっていたと思います」 ホラーからギャグ展開は難しそうなイメージがあるが、本作は「『いらないお菓子を押しつけて怒られる』という、友達同士ならなんてことないやりとりを人じゃないものとできたら楽しそうだな」というテーマを軸に制作しているとのこと。 「ホラーとギャグって対極にあるようでいて密接なものだと考えていて、『自販機と指』は怪異とのコミュニケーションがうまくいったので結果的にギャグ展開になりましたが、ホラー展開になる可能性もはらんでいます。そのうえで、平和なやりとりに一種の尊さを感じる人もいるんじゃないかと思います」と語る。 身近な怪異とのゆるい邂逅や交流を描く作品が好きだというさめこさん。「自販機と指」のほかにも、異類婚姻譚や異形に魅入られた少年の末路など少し不思議な人々の営みを描いている。これらの作品はX(旧Twitter)やpixivのほか、コミックシーモアやAmazon Kindleでも読むことができる。 また、2023年12月13日発売の【COMIC Be vol.121】にて「リヒト君はヒト」が連載スタート。こちらもぜひチェックしてほしい! ■取材協力:さめこ(@SamekoShark)