パリ五輪で聖火ランナー選出の垂見麻衣さん 東京大会はボランティア経験「懸け橋役に」
ただ、やはり会場にはどことなく寂しさと緊張感が漂い、バンクーバー五輪で感じたポジティブな雰囲気とは明らかにかけ離れていた。
運営側にかけあい、選手控室近くに置かれたホワイトボードに「ようこそ」などとする歓迎メッセージをつづったり、折り紙で作った花を飾ったりした。「与えられた役割をしっかりと担うのは大前提として、ボランティアの仕事はそれだけではないはず。少しでも雰囲気を盛り上げようと、知恵を絞った」と振り返る。
東京大会後、同じコロナ禍での開催となった北京冬季五輪のボランティアに向け、「加油(頑張れ)!」と激励する寄せ書きを送った。「『こうしたらみんなが喜ぶかもしれない』という発想の積み重ねが、成功につながる」とのメッセージも添えた。
特異な形式となった大会を経て、五輪の素晴らしさも難しさも知ったから、「私たちだけで終わらせず、次に引き継ぎたい」との思いは強くなった。パリ五輪の聖火ランナーに応募した動機も、そこにあった。
■トーチキスで感謝の思い
今大会ではボランティアにも選ばれており、卓球会場で各国のメディア対応を担う。応募の際は、東京大会のボランティア経験に加え、フランス語のオンライン勉強会を発足させて月1ペースで実施していることなども、自己PRに書き込んだ。そうした点が、聖火ランナー選出も含め組織委に響いたと感じている。
聖火ランナーとしての晴れ舞台は、7月20日午後2時ごろ(現地時間)。パリから南東に50キロほど離れたムランという都市を走る。担当距離は約200メートルだが、トーチを想定した500ミリリットルのペットボトルを片手に、自宅周辺でのウオーキングにいそしむ。12日には現地入りし、下見なども入念に行う予定だ。
大会組織委からは、自身以外の日本人ランナーは、コース全体で12人と聞いている。
「スポーツの実績があるわけでもなく、著名人でもなく、ましてフランス人でもない私が、こんなチャンスをもらった。五輪にはさまざまな関わり方があり、多くの人の支えの中で成り立っているということを、表現できたら」。
トーチキスの際は、感謝の思いが伝わるような、ちょっとしたジェスチャーを考えているという。そして何より、笑顔で走り抜けるつもりだ。(中村翔樹)