『シリーズ人口減少』⑫漁師町の賑わいを取り戻す取り組み【高知】
RKC高知放送
人口減少が進む高知県で未来の社会のあり方を考える人口減少シリーズ。 今回は人口減少×漁師町です。高知県の最南端、土佐清水市で始まった取り組みを取材しました。 土佐清水市の窪津地区です。漁師町として賑わいを見せ、半世紀ほど前の1969年の人口は959人でしたが、現在は200世帯・約350人と減少し高齢化率も57.6%に達しています。 さらに人口の減少に伴い空き家の数も増加。今では70軒の空き家が地区内に点在しています。 そんな窪津地区でいま、ある取り組みが進められています。 今年10月、窪津地区にある空き家で行われていたのは、空き家を宿泊施設にするためのDIYリフォームです。 この日は、床に木目を強調する塗料を塗ったり廃材を使って壁をアレンジするなど、手作業でリフォームが進められていました。 ■企画の発起人・林千博さん 「窪津地区は漁師町で、それが高齢化と過疎化が進むにつれて空き家も増えてきて。定置網漁の従業員の不足もあり、新しい人の流れを作ろうと思い、宿泊業を開設すれば観光客やⅠターン・Uターンの人が入ってきてくれると思い、宿泊業をやることにした」 現在、窪津共同大敷組合で働く林さん。主な仕事は定置網で獲れた魚を仕分け、重さを量り、せりのサポートをするなど組合の事務作業です。事務員の仕事と並行しながらDIYの取り組みをはじめたのは、故郷への思いからでした。 ■林さん 「今、窪津の町を歩いても人に会うことがあまりなくて。昔見た風景とは全然違う。家が少なくて人が少なくなっていくとやはり寂しい」 窪津地区出身の林さん、減っていく人口や空き家の増加を寂しく感じていました。 窪津地区では、1995年頃からは窪津漁協が中心となって祭りや市場を開き、東京の子どもたちを招いて民泊体験を企画するなど活気もありました。 しかし、人手不足や地区に住む人たちの高齢化のほか、地域を引っ張ってきた漁協の合併などによりイベントは徐々に無くなっていったといいます。 ■林さん 「外から人が入ってきて、観光定置とか浜遊びとか魚捌き体験とか。今全くしてないので、こういったことをできればまた少しでもいいのでやってみたい」 漁師町として栄えたあの頃の賑わいを取り戻したい。 そこで目を付けたのが空き家をDIYして作る分散型ホテルの取り組みでした。 ■林さん 「窪津にたくさん空き家もあったので、これは分散型ホテル、町全体に宿泊施設があればもっと活気が出て人も入ってきやすいし。移住者だけでなく観光客ももちろん宿泊してもらえるので人の流れができて、関係者人口も増えて、窪津の魅力も伝えられるし、それによって相乗効果で移住者も増えて大敷の従業員も募集が増えるかなと思って分散型ホテルにたどり着いた」 知り合いを通じて出会った高知市の内装業者と協力し、窪津地区内にある築35年から50年ほどの空き家3軒を安く譲り受け、いま改装を進めています。 ■林さん 「だいたいお昼休みに1時間ぐらい来て様子見て少し手伝った。仕事終わりに4時半ぐらいから1時間ぐらい作業している」 室内の多くは変えず床や壁を塗ったり古材を使い、壁を装飾するなど作業に励んでいます。 普段は1人で作業することもある林さんですが、この日は大敷組合の漁師が手伝いに訪れていました。 高木亮さん(31歳)です。高木さんは神奈川県出身ですが、田舎暮らしに憧れ土佐清水市に移住。漁師の仕事についてこう話します。 ■高木さん 「実際にやるのと見るのとは全然違って大変。大変だがやりがいはあるのかなと思う」 自身もDIYが好きだと言い、時間が許すときには手伝いに訪れているといいます。 ■高木さん 「窪津っていう地域だけでなく、土佐清水に色んな人が来てもらえるならやってみようかなと思ってやり始めた」 国が5年毎に行っている調査によりますと、漁業就業者数は年々減り続け、2023年には3000人を下回りました。一方、実は高木さんのような新規就業者数は、統計を取り始めた2013年以降、わずかではありますが増え、2023年は71人でした。 林さんが挑戦している空き家改修の取り組みは、漁師を目指したい人の受け皿となる可能性もあります。 11月11日、林さんたちは宿泊施設としての方向性について検討を進めていました。 ■林さん 「窪津を拠点にして土佐清水市内を回るのもいいかなと思って来たので。(清水・窪津の)魅力をどうやって伝えていくかを考えていく」 現在、3軒のうち1軒は完成しモニターなどを受け入れていて、林さんはこの宿泊施設を軸に釣りの体験や朝どれの魚の提供などを企画し、地域と観光客の関わりなども増やしていきたいと話します。 ■林さん 「窪津っていい所なので、その魅力を窪津に来た人に伝えていきたいのと、宿泊するお客さんと地元の住民の方々、窪津の土地柄がうまく調和する、それを繋げる場所になればいい。そういう取り組みをすることで窪津に人がどんどん来て移住される方がいて、移住された方から漁業に就業される人ができれば一番いい」 漁業者を増やすため、そしてふるさと窪津のため。 林さんの取り組みは続きます。