かつては「共用部分に噴水」が流行に… 今どきマンションの共用設備とは?
『家を買う! 建てる! 幸せになる住まいを学ぶプロジェクト』のテーマ「タワー? 中古リノベ? マンション派に必要な知識」から、4つの記事に分けてレポート。〝ブランドマンションの特徴と強み〟と〝共有部分の設備で人気のモノ、いらないモノ〟について解説します。 【マイホーム購入者に聞いた!】マンションか戸建てか問題、結局どちらが正解?
施行会社の大小よりも重要なのは管理状況
講師は引き続き、さくら事務所会長で不動産コンサルタントの長嶋修先生と、さくら事務所代表の大西倫加先生です。 マンションを選ぶときのひとつの基準に、施行するディベロッパーの存在があります。大手のブランドマンションの特徴や強みはありますか? 長嶋「安心感というのはあるかもしれませんが、結論から言うとほとんどないです。売り出し価格は高くなる傾向にありますが、10年、20年経って中古物件としての価値に、大手だから高い、そうじゃないから安いというようなことはないですね。 以前、大手とそれ以外で、それぞれの平均価格、売り出し価格、成約価格を調べたことがあるんですが、確かに大手の物件の方が値落ちしづらい感じにはなっているんですよ。でも、その内訳をよく見ると、より都心に近かったり、より駅に近かったりというように、大手だから、中小だからというよりも、結局、立地が良かったということなんです」 大西「最近は仕入れ競争が激化しすぎて、大手しか建てられないというのもありますね」 長嶋「10年前は大手の占有比率が2割ぐらいだったのが、今は6割くらいを占めていますから。リセールバリューという意味では、ブランドというよりも、そのマンションの管理組合の運営状況のほうがよっぽど効いてくると思いますね」
豪華設備の維持にもコストが掛かっている
マンションというと、占有部分のほかに共有部分のつくりの違いがあります。近年、豪華さが目につく物件も多い中、共用の設備として必要なモノ、不必要なモノはありますか? 長嶋「かつて共用部分に噴水をつけるのが流行ったことがあるんですが、多くのケースで今は水を流すのを止めていて、カラス除けにネットをかけたりしているところもあるほど。何だろう? みたいになっているところが多いですね。あとは、大規模やタワーマンションでいえば、バーラウンジやフィットネスクラブ。中には温泉をつけたところもありましたけれど、結局、運営コストを考えて途中で止めたり、規模を縮小するところが少なくありません。 最近だと、リモートワークの普及で共用部分にリモートワーク部屋みたいなものをつくることも多いんですが、皆に人気があっても自分が使わないのでは意味がないですよね。やはり、利用率や運営コストがどれくらいなのかは調べてみるはいいかもしれません」 大西「まさに自分が使うか、使わないかなんですが、とくにプールやサウナといった水施設は、修繕費や維持費を含め、お金がかかることは知っておいてください。噴水なんかは、お金がかかる上に掃除もこまめに必要で、苔が生えていてはせっかくの噴水も台無しになってしまいますから。 長嶋からも話があった、リモートワーク部屋のようなデスクワークができるスペースをつくるところは、近年増えています。ライブラリーを広めにつくったり、あるいは違う施設だったところを改修したりしているところもあります。やはり、ずっと一緒の部屋にいるというのは息が詰まるということもあって、気分転換になるような施設や設備は人気です。 あとは、宅配ボックスもマストになっていて、冷蔵・冷凍機能のある宅配ボックスは人気を集めていますね」 【講師】長嶋 修(ながしま おさむ) 不動産コンサルタント/さくら事務所会長。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立。2008年、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会設立し理事長に就任。2018年、一般社団法人地域微動探査協会理事に就任。様々な活動を通して『中立な不動産コンサルタント』としての地位を確立。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。新著に『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)他、著書・メディア出演多数。