「ゲームなのに後味悪い…」名作RPGの主人公が送った「あまりに不幸すぎる人生」
■己の存在まで否定された、悲しき“レプリカ”…『テイルズ オブ ジ アビス』ルーク・フォン・ファブレ
『テイルズ オブ』シリーズは、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売されている有名RPGシリーズだ。なかでもその不幸な境遇でプレイヤーに衝撃を与えた主人公といえば、2005年にプレイステーション2用ソフトとして発売された『テイルズ オブ ジ アビス』に登場する、ルーク・フォン・ファブレだろう。 長い赤髪と整った顔立ちを持つ美青年で、ファブレ公爵家の一人息子であることから、貴族としての暮らしを送っていたルーク。一見すれば、非常に恵まれた背景を持つキャラクターに思える。 しかし、鉱山都市アクゼリュスでの一幕が、その後の彼の運命を大きく変えてしまう。 師として慕うヴァンの言葉を信じ、ルークは自身が持つ“超振動”の力で瘴気に満ちた鉱山都市を救おうと奮戦するのだが、鉱山都市を支える柱を破壊したことがきっかけとなり、多くの命が失われる最悪の結果に……。 予想だにしない事態にうろたえるルークは、あくまで自分は悪くないと必死に弁明。しかし、責任転嫁しようとするルークの姿を見て、これまで一緒に歩んできた仲間たちも彼を見放してしまう。 これだけでも十分に悲劇なのだが、本性を現したアッシュの口から告げられた“真実”が、ルークを絶望のどん底へと突き落としてしまう。 実はルークは、ルーク・フォン・ファブレという人物を模して生み出された「レプリカ」、いわばクローンのような存在だったのだ。 慕っていた師に裏切られ、仲間に見放され、そして極めつけに自身が誰かの“模倣品”であったという絶望……その意外すぎる展開の連続はまさに衝撃的だった。彼とともに戦ってきたプレイヤーの心にも強烈なインパクトを与えたことだろう。
■蹂躙される自軍の姿はまさにトラウマ…『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』シグルド
数々のユニットを操り勝利をもぎ取るシミュレーションRPGは古くから人気のジャンルだが、任天堂の『ファイアーエムブレム』は、その金字塔ともいえる大人気シリーズだ。 なかでも1996年に発売されたスーパーファミコン用ソフト『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』前半の主人公・シグルドは、その不幸極まりない末路が多くのプレイヤーにトラウマを残している。 彼に最大の悲劇が訪れるのは、5章クリア後に発生する「バーハラの悲劇」のイベントだ。 謀反の嫌疑をかけられ、多くの仲間を失いながらも戦い抜いたシグルドたちは、兼ねてから軍に協力してくれていたアルヴィスの元を訪れる。だが、なんとアルヴィスはシグルドらを国家転覆を企てた反逆者とし、その場で処刑を宣告。 自身が謀られていたことを悟るシグルドだったが、彼に襲いかかる不幸はこれだけにとどまらない。なんとアルヴィスはマンフロイにシグルドの妻・ディアドラの記憶を消させて、自身の妻にして傍らに置いていたのである。 信じた者に裏切られ、愛する妻を奪われ失意に暮れるシグルドに、アルヴィスは容赦することなく処刑を決行。周囲を取り囲んでいたバーハラ軍が“敵軍”を示す赤色に変化し、シグルド軍目がけて総攻撃を仕掛けるのだ。 あまりにも報われないシグルドの最期はもちろん、手塩にかけて育ててきた軍団が蹂躙される姿を成すすべなく見守るしかないプレイヤーたちにとって、このイベントは強烈なトラウマとなったのだった。 数々の苦難を乗り越え戦い抜いていくゲームの主人公たちだが、そのすべてが報われるとは限らない。あまりに悲痛かつ不幸なその境遇の数々に、思わず同情してしまうプレイヤーも少なくはないだろう。
創也慎介