亀田興毅引退で幻に終わった東京ドーム計画
元3階級王者、亀田興毅(28)が米国・シカゴでWBA世界Sフライ級王者、河野公平(34、ワタナベ)に挑戦、0-3の判定で敗れた。WBA世界Sフェザー級スーパー王者の内山高志(ワタナベ)が「まさか、あんなスタイルで臨むとは予想しなかった。倒せると思ったのだろう」と、驚かせるような好戦的なスタイルで1ラウンドから立ち向かったが、ローブローによる2回の減点。2ラウンドには、強烈な右ストレートを食らってダウンを喫すなど、乱打戦に強い河野ペースで試合が運んだ。途中、エキサイトしてラフなファイトを繰り返す両選手に業を煮やしたレフェリーが試合を止めて立会人と協議。 「次やったら、その時点で試合を止める。クリーンにファイトしろ!」と警告する異例の事態もあった。最後まで、亀田らしい波乱含みの試合となったが、両目を腫らし、足元がフラフラになりながらも、亀田は、リング中央で足を止めて殴りあった。 試合前は「ガードを固めてポイントアウトをされる危険性があった。5分5分と思っていた」(内山)「サウスポーは苦手だし、4-6で河野さんが不利だと思っていた」(WBA世界ライトフライ級王者、田口良一)という予想されていた試合が逆の展開になったのは、「亀田が前に出てきたから河野のパンチが当たった」(内山)というのも理由のひとつ。アウトボクシングが領域の亀田が珍しくインファイトを仕掛けた結果、河野の得意な展開になったのは皮肉だった。試合後、亀田は引退を表明したが、その決意が11か月ぶりのブランクを感じさせない激闘につながったのだろう。 元WBO世界バンタム級王者の3男、和毅(24)は、米国で9月にWBA世界バンタム級王者のジェームス・マクドネル(英国)とダイレクトリマッチで挑戦したが、不運なダウンを取られるなど判定で敗れ、元2階級王者の次男、大毅(26)も、国内のライセンス剥奪の原因となった2013年12月のWBA、IBF世界Sフライ級王座統一戦以来の再起戦で敗れ無冠状態。ギネスブックに掲載された史上初の3兄弟世界王者を達成した亀田3兄弟も、長男・興毅の引退で、ひとつの亀田時代に終焉を告げることになった。 父の史郎氏と、天下茶屋の喫茶店で一日、話をしたのが懐かしい。 「ボロボロになって辞めていくボクサーをたくさん見ている。だからパンチを打たせたくない。ガードを固めるディフェンス重視のスタイルにさせているのは、そのためや」 そして興毅の引退にもついても語っていた。 「引退も早いほうがええ。結婚せずにとことんやらせる。一度限界がくるから。そこで結婚してもう一花を咲かせる。4階級制覇をやって、財産をしっかりと作って20代で引退してええんとちゃうか。次の人生の方が長いんねんから引き際は綺麗にや。そのためには負けたらあかん。無敗のまま引退するのが理想やろうな」 亀田3兄弟は、尊敬している父の意見を、実によく聞く。 その話どこかで聞いた……という話があると、それは、ほとんど父の意見の受け売りだった。4階級制覇は実現できなかったが、まだ大阪を拠点にしていた時代に語っていた父が描いたようなボクシング人生を興毅は送り、そして父の言葉通り20代で、12年間のボクシング人生を終えてグローブをつるした。だが、ひとつだけ誤算があるとすれば、ボクシング界からはじきだされてしまったことだろう。 実は、父の史郎氏には、壮大なる夢プランがあった。 兄弟3人によるトリプル世界戦を含む、国内の世界チャンピオン一同を大晦日に東京ドームに集め、過去最大のボクシングイベントを開くプランだ。 「各テレビ局が、自分らが契約している選手の枠だけを交互に放映してもらい、試合はドーム一箇所でファンに楽しんでもらえばどうやろうか。和毅と山中の統一戦も組み込めばええよ」 興毅の怪我や、国内ライセンスを剥奪されたことも手伝って、3兄弟のトリプル世界戦もタイミングが合わずについに実現できなかった。もし実現していれば、マイク・タイソン以来となる東京ドーム興行である。