ヤマナハウスの「空き家DIY」講座が盛況 南房総(千葉県)
南房総市で里山づくりの活動をしているヤマナハウスが、同市内で開いている「空き家DIY」講座が盛況だ。 2023年11月~24年2月に計5日間の日程で設けた初回の反響の大きさから、急きょ24年3月開始で設定した2回目のコースも募集開始からほどなく、定員が埋まった。 関係者は、受講した人らが、増える空き家の活用や地域のにぎわいづくりの担い手になってくれれば、と期待する。 同市の原岡海岸に面する築44年の空き家が「教材」で「教室」。ヤマナハウス代表の永森昌志さん(47)の会社が所有する。 プログラムは1、2回目とも(1)屋根・解体(2)下地処理(3)内装(天井・建具)(4)床張りDIY(5)壁貼りDIYの5コマ。期間中の週末に1コマずつ行う。 館山市の大工や、空き家修繕を手掛けるヤマナハウスの会員が講師を務める。 初回は、23年夏から受講者を募集。2カ月ほどで20人の定員に達し、締め切った。 ところがその後、受講できなかった人から「次はいつやるのか」との問い合わせが殺到。急きょ2回目を設定したが、募集開始から1カ月足らずで定員の大半が埋まった。 受講者は都内が最多で、千葉北部、神奈川、埼玉と続く。茨城や山梨から通ってくる人も。目的は「DIYに興味がある」の他に空き家を修繕して「自分で使う」「投資用に貸し出す」「将来の移住や2拠点生活のため」などさまざま。 背景には社会問題化する空き家の増加がある、と永森さんは分析する。 総務省が5年に一度実施している「住宅・土地統計調査」の18年の集計によると、別荘や賃貸用を除く「その他の住宅」の空き家は347万戸。13年の調査より29万戸増えた。 安房地域では、館山市が3470戸(13年調査比300戸増)、鴨川市は2080戸(同120戸増)。南房総市は2320戸で13年の調査より20戸減とほぼ横ばいだったが、08年調査の2000戸と比較すると高止まり傾向が続いていた。 鋸南町はホームページで公表している「空家等実態調査」によると、14年度に729戸、20年度に312戸が確認された。 講座は「全国的な課題である空き家の活用と、この地域にかかわる人を増やし、移住を促す」(永森さん)ことを目的にしている。 2回とも、座学で南房総市での空き家の現状、増加が地域に及ぼす影響などを丁寧に説明。課題をきちんと理解した上で修繕作業を実践してもらう。 受講費用は税込み11万円。建材代や講師、スタッフの人件費、講習後に車で15分ほどの山あいにあるヤマナハウスでの夕食会やジビエ肉のバーベキューといった食事代なども含む。 5月25日までの2回目を受講している渡辺道也さん(28)は、大学卒業後、愛知県の建築会社で働いたが、今は出身地の柏市に戻り「大工になりたい」と受講した。「車で2時間半かかるけど、来るのが楽しくて仕方がない」。受講後は館山市など県南部で職を得たいと考えている。 3回目以降は未定だが、永森さんは「この地域では空き家に価値がないと思っている人も多い。一方でDIYしたい人はたくさんいる。ここをうまくマッチングさせたい」と話している。