JICA協力隊員リレーエッセイ ブラジル各地から日系社会を伝える(9) 高齢者の余暇充実と生活向上を手伝う サンパウロ州スザノ市 谷口玲子
2023年5月より、サンパウロ州スザノ市郊外にあるサンパウロ日伯援護協会が運営する高齢者養護施設イペランジアホームで活動している谷口玲子です。 イペランジアホームは、日本人移民夫婦が寄付した土地に1983年に開設され、自然豊かな環境で快適な老後を過ごしていただけるよう、専門スタッフによるサポートと様々なレクリエーションを用意されています。私は、入居者の余暇活動の充実と生活の質の向上を目指し介護士として活動しています。 広いホーム敷地内には野菜畑や果樹園があり、収穫物は毎日の入居者のお食事に栄養と美味しさを与え、またダリア園をはじめとする四季折々の花々は、日々の散歩を楽しいものにしています。敷地の小高い場所からの眺めを楽しみにしている入居者もいます。 ホームに一歩入ると、入り口近くにある電子ピアノで、「君が代」や「上を向いて歩こう」を弾いてる入居者がいます。彼は、昨年のイベントの式典で「君が代」斉唱の伴奏を務めることとなり、その後も、毎日練習を続けています。 更に奥に進むと、入居者の皆さんがくつろいでいるリビングがあり、その脇に作業療法室があります。ここが私の活動場所です。室内は、塗り絵や折り紙をする入居者の憩いの場となっています。
部屋は誰でも入れるようにと開放しており、ふらっと遊びに来て同僚の作業療法士や私とおしゃべりをしに来てくださる方もいます。 折り紙のような手を使った作業で脳と心の健康を保つことを作業療法と言います。私は、一人でも多くの入居者にこれに参加してもらいたいと思い、「折り紙は楽しいですよ」と皆さんに声掛けをしました。その時、「私、やりたかったの」と真っ先に参加してくれた入居者さんがいました。その方は、佐藤・ペレス・さち子さんといいます。 さち子さんは結婚するまでは畑の仕事で忙しく、結婚してからもご主人を早くに亡くし男の子二人を一人で育てたので折り紙などする余裕は無かったそうです。 さち子さんの折り紙作品の出来栄えに感心したお孫さんが、勤め先で配ると注文をされた事がありましたが、さち子さんは一生懸命に折られていました。
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