富士山麓の自然を野生シカの食害から守れ! 山梨のジビエ施設好発進「プラスの存在へ」
富士山麓で捕獲した野生シカの解体から加工、販売を担う山梨県富士吉田市の施設「富士山ジビエセンター」がオープンした。山麓ではシカが増えすぎて、森林や農作物の食害に悩まされていることが背景にある。集客やジビエ販売ともに目標の4倍ペースと好調な滑り出しで、市は「環境保全に貢献し、野生鳥獣を負の存在からプラスに変える」と意気込む。(共同通信=高野陽子) 富士山が一望できる「道の駅富士吉田」の隣にあり、黒い外壁の平屋が見えてくる。複数の家族連れがシカ肉を使ったハンバーガーを購入し、東京都内から訪れた金子祥司さん(56)と妻なおみさん(57)も「臭みがなく、肉汁のうまみが広がる」と笑顔だった。 市によると、周辺ではシカが稲や野菜、樹木の新芽を食べる被害が発生し、農作物被害額に占める割合が野生鳥獣の中で最多だった。一方、捕獲する地元猟友会メンバーの高齢化が進み、人数も減少。山麓のシカは年間約500頭が捕獲されるが、加工施設がなく、穴を掘り埋めるしかなかった。市は有効活用するために施設を建設し、7月中旬にオープンさせた。
施設は延べ床面積が約370平方メートル。猟師が捕獲したシカを持ち込み、施設が買い取る。解体後、うまみを閉じ込めるため数日間熟成し、部位ごとに切り分ける。観光客が手軽に食べられるようハムやソーセージなど身近な食材に加工し、施設内で商品を販売する。 ジビエ加工は「嫌悪施設」のイメージを持たれ、市街地から離れた場所に設置することが多いという。市は、ジビエ文化の理解を深めてもらうため年間200万人が訪れる道の駅に隣接させた。 イラスト解説を展示し、学習施設の機能を持たせた。熟練の猟師から若手への技術伝承にも取り組む。運営公社の責任者、水越欣一さん(62)は「命の大切さやジビエ文化を知ってもらう機会にしてほしい」と話した。