もう一度時を刻んで 日本最古の旧西田川郡役所塔時計(鶴岡)、数年前から不具合
鶴岡市の常念寺が所有する旧西田川郡役所塔時計が今年4月、新たに県有形文化財に指定された。1880(明治13)年製作の銘文があり、現存する国産塔時計では日本最古とされるが、数年前から故障が直らない。“144歳”の大きな古時計。文化的な価値は不変だが、関係者は再び時を刻むことを望んでいる。 同市などによると、初代県令三島通庸が建設を命じた同郡役所(1881年落成)の塔屋に取り付けられた。当時の「国内最高の時計技術者」とされる金田市兵衛が製作者だ。ただ、設置後、庄内地方の強風が難敵に。風が吹き付けると、振り子がよく止まることから下ろされ、85年ごろに同寺に移された。寺では時計に合わせて鐘を突き、町の人に時間を知らせた。 戦中から動かない期間が続いたが、1983(昭和58)年に市内の時計店主が修理に成功した。6月10日の「時の記念日」では、寺に隣接する常念寺保育園の園児が見学するイベントが続く。目に見えない時を感じるとともに、物を大切にする気持ちを養ってもらうためだ。
内部の機械装置がかみ合い、針を進めてきた時計だが、数年前から正常に動かなくなったという。一度は時計店の関係者が修理を試みて分解したが、うまくはいかなかった。現在も針が動くことはあっても、遅れたり、途中で止まってしまったりする状況だ。不具合の原因も分からない。 歴代住職や家族、地域住民らに大切に扱われ、文化的にも価値のある逸品だ。「もし直せるならば直したい」と管理する渡辺剛紀副住職(57)は思いを述べ「信頼できる人が見つかればうれしい」と続けた。