「今日受けた仕事は原則、明日以降に取り組む」だけで仕事が回りはじめる理由 (滝川徹 時短コンサルタント)
■︎マニャーナの法則
タスクマネジメントの考え方のひとつに「マニャーナの法則」というものがある。マニャーナとはスペイン語で「明日」という意味だ。この法則は『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』にくわしく書かれている。 基本的な考え方は「今日受けた仕事は原則、明日以降に取り組もう」だ。上司やクライアントからあらたな仕事を依頼されたとき、その仕事は翌日以降に取り組む。これを原則とする。 急な依頼にすぐに取り組んでしまうのは昔の私だけではないだろう。先に話したように、受けた仕事にすぐ取り組むデメリットは思いのほか大きい。割りこみタスクに費やす時間を自ら増やすことにつながるからだ。 ここでも上司から30分かかる仕事を依頼された例で考えよう。マニャーナの法則にしたがい、実際の作業は明日以降に取り組むとすればどうだろう。割りこみ(タスク)に費やした時間は上司とのやりとりのみ(たとえば1分としよう)となる。明日以降に対応すると決めたそのタスクは、作業日当日予定されたタスクになるので割りこみタスクのように悪影響は及ぼさない。結果、残業なども生じない。 一方、頼まれた時点でその仕事に着手してしまうとどうなるか。割りこみタスクに費やす時間はやりとり含めて31分となる。この場合、自ら本当の持ち時間を削ってほかのタスクに影響を与えてしまっている。もちろん、「今日中にやってほしい」と言われたのなら仕方がない。しかし急ぎかどうかもわからない状況で、自ら負荷を増やす必要はない。 マニャーナの法則も「相手が必ずしも急いでいるとは限らない」という考え方を基本としている。今日受けたからといって、相手から「今日中にやってほしい」と言われない限り必ずしも即座に対応する必要はない。それならば明日以降に取り組もう。そう提唱している。 マニャーナの法則が効果的なことは理解できても実際に仕事を頼まれた状況ではついその仕事に手を伸ばしてしまう。そんな人もいるだろう。大切なのはそうならない「仕組み」を作ることだ。仕組みといってもそんなに難しい話ではない。参考までに私がマニャーナの法則に出合った頃に実践したやり方を紹介しよう。 当時私は会社のデスクにトレイを用意し、今日あらたに発生したタスクはそこに入れるようにしていた。上司や部下から仕事の依頼を受けたら急ぎでないことを確認したうえで、トレイにそれに関連する書類を入れるのだ。 クライアントからメールで用件が来たら、それを印刷してトレイに入れる。電話での依頼ならその内容を忘れないようにメモにしてトレイに入れる。そうして終業前にトレイに入っている翌日以降取り組むタスクを作業日付毎に整理して退社していた。 割りこみタスクにかかる時間は依頼されたときのやりとりと帰宅前の作業日の振り分けのみ。依頼された日にトレイの中は綺麗になるので、メモなどでも失くす心配もない。 たったこれだけだが、マニャーナの法則を確実に実践することができた。この法則の良いところは実践が簡単ですぐに効果が出ることだ。実際、このやり方ですぐに自分のペースで仕事を進められるようになった。 メールの印刷や先のクリアファイルの活用など、アナログだと思っただろうか。だが自分の中で仕組み化できるまではアナログくらいがちょうどよいと思っている。だからと言って、これが性に合わない読者もいるだろう。そのときはここでの原理原則をおさえたうえで自分に合ったやり方を探してほしい。