年金月11万円・認知症の80代母は特養へ→「追加が払えないなら退去です」施設からの宣告に、50代独身長女「私の老後資金を回すしか…」涙の決断のワケ
「どうして見てくれなかったの!?」「口を出すなら金も出せ」
女性の母親の年金は月11万円弱。空きがあるといわれた民間の老人ホームは費用が高額過ぎたため、特養へ入所することになった。 特養は人気が高く、都市部では1年以上待つこともある。しかし運のいいことに、女性の母親が暮らす地域は比較的余裕があったようで、3カ月後には入所が決まった。 「特養に入所してくれて、本当に安心しました」 しかし、兄とは大ゲンカになってしまったという。 「〈どうしてお母さんを見てくれなかったの!?〉と怒ったら、〈何もしないやつにいわれたくない〉といい返されて…。何もしてないのは兄じゃありませんか? 従兄弟のお嫁さんが見かねて連絡くれるほど、状態がひどかったのに…」 女性は兄から「口を出すなら金も出せ」といわれてしまった。 「冗談じゃありませんよ。私は独身ですから、自分の老後のために節約しています。私、〈お兄ちゃんにはチビたちがいるから〉といって、母がせっせと援助していたのを知っています」 「姪っ子をかわいがっていたら、兄嫁に〈うちの子に老後を見てもらおうなんて、思わないでくださいね〉って言われたのを、まだ恨んでいます…」 女性は怒りが収まらない様子だった。
仕方ない、新NISAの投資に回そうと思っていたお金を…
とはいえ、とりあえずはひと安心…。そう思って過ごしていたところ、問題が発覚した。入居して3カ月後、施設から連絡が入ったのである。 「〈お母さんが夜中に大声を出して困ります〉というんです。あんなに穏やかで物静かだった母が、まさかそんなこと?…って、信じられませんでした」 「個室への移動を求められたのですが、そのためにはお金が…」 追加の費用は5万円。 老人ホームには「支払いの滞納」「長期入院/介護度の変更」「迷惑行為」といった退去要件があり、それに該当した場合は退去を迫られるが、今回のケースでは、個室に入れば退去しなくていいという。 認知症患者が徘徊したり、大声を上げたりするのはよくあることで、また、ホーム側の対応も、施設によって違う。退去を求められなかったのはラッキーな例だといえるだろう。 しかし、女性の表情は浮かない。 「母の年金と貯金では、当初の費用で限界です。でも、だれも面倒を見られないのに、退去という選択肢はありません。ですから、費用のことを兄と話し合おうとしたのですが…」 現状でも予算的にギリギリの状況のため、プラス5万円となると、子どもが負担するしかない。だが兄は「うちは家族を抱えていてパツパツ、少しも出せない。家族がいないお前が払え」と言って話にならない。 「もう、こればかりは仕方ありません…。結局私が折れて、自分の老後資産形成のために新NISAに投資しようと思っていた分、母の施設に回すことにしました」 女性はうつむいた。 人は必ず年を取り、また、介護が必要になる可能性もある。子どもを当てにするのではなく、自分の老後は自分でどうにかすることが重要だ。しかし、昭和の価値観を持つ世代には、まだそのような発想・思考はまだないのかもしれない。 いまの50代は、親の面倒を見る最後の世代であるとともに、子に面倒を見てもらえない最初の世代だと聞く。時代の変わり目には理不尽なことが起こりやすいが、後悔しないよう、しっかりと資産形成を考えることが重要だ。 [参考資料] 内閣府『認知症年齢別有病率の推移等について』
THE GOLD ONLINE編集部