なぜマイクロプロセッサじゃなかったのか。HP Nanoprocessorの立ち位置(人知れず消えていったマイナーCPUを語ろう 第16回)
ちなみにHP 9845AはMemory周りが若干異なるらしい。それは兎も角として肝心なのは、HP 9845ではLPU(Logical Processing Unit)とPPU(Peripheral Processing Unit)という2種類のCPUが存在し、しかも並行で動くヘテロジニアスな構成になっていたことだ。 ここでLPUはBASICなどのプログラムの実行を担い、PPUは周辺のI/OとかCRTへの画面出力などを担う格好である。どちらも16bitで、しかもHP独自のものであった。 というか、実際にはLPUとPPUは「ほぼ」同じものである。アーキテクチャそのものは、HPが1966年に発表したHP 2116Aという16bitミニコンのものを踏襲している。 もっともHP 2116Aはディスクリートで組んだCPUボードにコアメモリという構成だったが、その後4Kbit SRAMに切り替わっている。 1977年にはこのHP 2000シリーズのミニコンはHP 1000シリーズに名前が変わり、1980年代に入るとAMDのAm2900シリーズを利用して実装されるようになってた。 ただHPはこれに先んじて、このHP 2116AのアーキテクチャをDesktop Computerに持ち込んだ。 1968年に発表されたHP 9100シリーズはまだディスクリート部品を使ってBCD演算を実装しているものだったが、1971年にこの9100シリーズの後継として登場したHP 9810シリーズはHP 2116AのアーキテクチャをTTL ICで実装している。 これはHP 9830シリーズまで続いたが、HP 9840シリーズでは更に集積度を上げたLSIを構築した。といってもHP 2116AのCPUをまるごとワンチップで構築することは不可能であり、LPUは命令フェッチや実行制御、整数演算を行うBPC(Binary Processor Chip)と、BCD浮動小数点演算を行うEMC(Extended Math Chip)、それとI/O関連(割り込みやDMA処理を含む)を行うIOC(I/O Chip)の3チップ+4つのBIB(Bi-directional Interface Buffer)から構成された。
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