入社時によく確認せずサインした「労働契約書」。改めて確認すると明らかに労基法に「違反」しているのですが…無効にできますか?
入社時には会社と労働者との間で労働契約を結びますが「内容をよく確認しないままサインした」という人もいると思います。 入社後に改めて確認したところ、労働基準法に違反する内容になっていることに気づいた場合、その契約はなかったことになるのか疑問に感じるでしょう。 本記事では、労働基準法に違反する契約でも有効なのか、それともすべて無効になるのかについて、詳しくご紹介します。
労働契約とは?
労働契約とは、労働者と使用者の間で締結する契約のことです。労働者は一定の労働条件のもとで労務を提供し、使用者はそれに対して賃金を支払うことを約束します。 厚生労働省によると、労働契約を締結する際に、会社は労働条件を明示しなければなりません。労働条件のなかでも、以下の項目に関しては、口約束だけでなく書面を交付する必要があるとされています。 ●労働契約の期間や契約更新について ●仕事をする場所や仕事の内容 ●始業と終業、休憩時間の時刻 ●残業の有無 ●休日や休暇について ●賃金の支払い方法 ●退職についての決まり など また、労働基準法では以下のように労働契約に盛り込むことが禁止されている事項もあります。 ●労働者が労働契約に違反した場合に違約金を支払わせること(労働基準法第十六条) ●労働者にお金を前貸しし、賃金で相殺すること(労働基準法第十七条) ●労働者に強制的に貯蓄の契約をさせ、貯蓄金を管理すること(労働基準法第十八条) 労働契約に上記の内容が含まれていないか確認しておきましょう。
労働基準法に違反する労働契約は有効なのか?
「労働契約が労働基準法に違反する内容だということに後から気づいた」という場合はどうなるのでしょうか。 厚生労働省によると、労働基準法に違反していても契約全体が無効になるわけではありません。労働基準法の基準に達しない労働条件を定めている部分のみを無効とし、それ以外の労働契約の内容については有効とされます。 そして、無効となった部分の労働契約に関しては、労働基準法が定める基準に置き換えて適用されます。 例えば「法定労働時間を超えて労働させた場合であっても、割増賃金を支払わない」という内容の契約になっていた場合、その部分の契約は無効となり「割増賃金を支払う」という内容に置き換えられることになるでしょう。