「家政婦過労死」勝訴が映し出す不都合な真実
海外の流れは保護強化
追い打ちをかけるのが、小泉構造改革以来の「小さな政府」路線の下、介護・保育などへの公的支援の縮小と、「女性活躍政策」による家庭内のケア・家事労働力不足の挟み撃ちだ。 「それなら海外から安い労働力を」という声も聞く。15年、「家事支援人材」という名の海外からの家事労働者が国家戦略特区で解禁されたのもその表れだ。だが、三つ目の不都合な真実は、その海外ではすでに、介護・家事労働者の保護強化が流れになっている、ということだ。 途上国も含めて女性の労働市場への進出が進み、介護・家事労働者の獲得合戦の様相も見られる。11年には各国の家事労働者たちがネットワークを組み「家事労働者条約(ILO189号条約)」を採択させた。 この条約は、労働法の適用外にされてきた家事労働者を他の労働者と等しく扱い、安全で健康的な作業環境や労働時間規制、最低でも連続24時間の週休の権利、労働三権の保障などを規定している。13年には家事労働者のグローバルな労働組合「国際家事労働者組合総連合」も発足した。 そんな中で、労基法改正も条約批准もない日本に人は来るのか。 「116条が撤廃されてもフリーランス化などによる労基法逃れが拡大するだけ」との指摘もある。とすれば、次は介護・家事労働者のための総合的な保護措置をつくるしかない。問われているのは、ケアや家事労働者は少子高齢化時代に必須のコストを伴うインフラ、という「不都合な真実」から目をそらさないことなのだ。
竹信 三恵子・ジャーナリスト、和光大学名誉教授