トップ交代! ポルシェ・タイカン・ターボGTへ試乗 怒涛の1108馬力 真っ当な「GTシリーズ」か
息が苦しくなる加速 コーナリングも見事
今回の試乗会場はスペインのサーキットで、ヴァイザッハ・パッケージを組んだターボGTが用意されていた。タイヤは、オプションのPゼロ・トロフェオRSも試せた。予め触れておくと、サーキット走行を考えているなら、こちらをオススメしたい。 ドアを開くと、ポルシェのGTシリーズではおなじみの、バケットシートが出迎えてくれる。身体にフィットし、座面は低く、場違いな印象はない。ステアリングホイールには、大きなパドルが一対備わる。 左側のパドルでは、回生ブレーキのオン/オフを切り替えられる。右側を引くとアタックモードが有効になり、1108psを開放するため、10秒間だけ駆動用モーターが163ps多く生み出すようになる。 ローンチコントロール時は、自動的にアタックモードもオンになるという。そもそもパワフルだが、更に強化されることは体感できた。息が苦しくなるほど、加速は鋭い。 静止状態からシームレスに、怒涛の勢いで速度が高まる。ブガッティ・シロンと遜色ないだろう。慣性が落ち着き、頭をヘッドレストから浮かせるようになる頃には、160km/hを超えていた。そこから先も、速度上昇に陰りはない。 加速力と比べれば印象的ではないものの、コーナリングも見事。車重を覆い隠しながら、フラットでクイックに旋回していく。ステアリングホイールは、直感的で情報量豊か。コミュニケーションを取りやすい。落ち着いたシャシー・バランスにも感服する。
高性能なマシンを、自ら運転している感覚
グリップ限界を超えても、不安定さは皆無。重く強力なクルマではあるが、スタビリティ・コントロールへ依存する必要はない。突然、挙動が変化することもない。これは、嬉しい驚きといえる。 高性能なマシンを、自ら運転している感覚がある。しかも、サーキットを何周も走れるタフさも備わる。 タイカン・ターボGTへ徐々に慣れ、コーナーの侵入速度が高くなると、通常のPゼロ・タイヤではフロント側のグリップ力が足りなくなる。公道で許される速度域ではないが、サーキット走行では物足りないかもしれない。 Pゼロ・トロフェオRSなら、旋回性能を劇的に高められる。ブレーキングのフィーリングも向上し、ABSの動作も抑えられる。ステアリングには、適度な重さとフィードバックが追加される。 だとしても、ポルシェのGTシリーズには似つかわしくない、グリップ不足へ最終的には陥る。911 GT3や718ケイマン GT4に並ぶような精度の操縦性や、一体感は備わらない。もちろん、内燃エンジンがもたらすドラマチックさも。 一方、高度なサスペンションとタイヤが叶える能力が、極めて高次元なことは事実。タイカンの可能性を極限まで引き上げた、ターボGTの仕上がりは素晴らしい。だが、真のドライバーズカーへアップデートするには、更に手を加える余地もあるだろう。 今回の環境では、すべてを判断することは難しかった。ポルシェの他のGTシリーズとの比較で、詳しく掘り下げる必要がある。改めて、試乗機会を設けたいと考えている。
ポルシェ・タイカン・ターボGT ヴァイザッハ・パッケージ(欧州仕様)のスペック
英国価格:18万6300ポンド(約3577万円) 全長:4963mm 全幅:1966mm 全高:1379mm 最高速度:305km/h 0-100km/h加速:2.2秒 航続距離:537-555km 電費:4.6-4.8km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2220kg パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター 駆動用バッテリー:97.0kWh (実容量) 急速充電能力:320kW 最高出力:1108ps(システム総合) 最大トルク:136.4kg-m(システム総合) ギアボックス:1速リダクション(フロント)+2速オートマチック(リア)(四輪駆動)
マット・ソーンダース(執筆) 中嶋健治(翻訳)