「男役さんより格好良く」OSK娘役の自立の美学 8月退団の舞美りら&見送る千咲えみ
主役である男役を引き立てる清楚で可憐な存在。そんな歌劇の娘役のイメージにあえて収まりきらないのが、「OSK日本歌劇団」の娘役だ。7月13日に京都・南座で「レビュー in Kyoto」が開幕するのを前に、いずれも娘役トップスターで、8月での退団を発表した舞美りらと、見送る立場の千咲えみが、「OSKの娘役の美学」について語った。 【写真】南座公演の取材会で笑顔がはじけるトップスターの楊琳と娘役トップスターの舞美りら 南座公演はトップスターの楊琳(やん・りん)と舞美の退団公演だ。華やかなダンスが持ち味の舞美は平成23年から楊の相手役を務め、「楊さんとふたりでしか作れない空気感がある」と胸を張る。 「寛大な楊さんへの甘えであり信頼感でもありますが、楊さんには『こうしたいんです』と思っていることを全部言って相談できる」と舞美は言う。だからこそ、楊から「一緒に卒業しませんか」と言われたときは迷わずうなずいた。 一方、舞美より3期下の千咲は「おふたりが前を走っていてくださったから、自分をもっと引き上げなきゃと思えた」と話す。特に娘役として追いかけた舞美の背中は大きい。 ■千咲を救った舞美の声 千咲が喉を悪くして声がうまく出なかったある舞台の初日。不安にさいなまれていた舞台袖の移動中、すれ違う瞬間に聞こえた「大丈夫? 大丈夫だよ!」という舞美の声でわれに返ったという。 「その一言が本当に心強くて救われたんです。舞美さん、すごく男前だった」と思い出してぽろぽろと涙を流し、「最後の一瞬一瞬まで学ばせていただきたい。もうご卒業が不安だとか思っている場合じゃない」と奮起する。 今公演のレビュー「BAILA BAILA BAILA」では、娘役も男役顔負けの激しいダンスを披露する。舞美は「『男役さんより格好良く踊ろうね』が私たちの合言葉」とほほ笑む。 舞美は「娘役は『男役に寄り添う』とよく言われますが、一歩引くことではないと思う」と思いを明かした上で、「自立して舞台に立つことで男役さんとふたりで成立する、それがOSKのすてきなパワーバランス」と力を込めた。 舞美にとっては、出身地の京都で迎える最後の舞台でもある。「思う存分、踊り狂います」と満開の笑顔で宣言した。
7月21日まで。チケットホン松竹(0570-000-489)。(田中佐和)