ゲーム配信は“職業病”で難しい!? 『FF14』とワインがつなぐ、吉田直樹×立花慎之介対談
声優・立花慎之介がメインMCを務める17LIVEのトークバラエティ番組『〇〇な控え室』に、『ファイナルファンタジーXIV(以下、FF14)』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏がゲストとして出演した。『FF14』ではアルフィノ・ルヴェユール役を務める立花と、世界中の“光の戦士”からリスペクトを集める吉田氏による、ライブ配信後の対談の様子をお届けする。(片村光博) 【写真】吉田直樹、立花慎之介の撮り下ろしカット ・実は麻雀から始まった2人の関係性 ――番組でも非常に仲の良い様子が見られましたが、おふたりが関係性を築き上げてきた経緯から伺えればと思います。 吉田直樹(以下、吉田):もともと、立花さんには『FF14』に登場する主要キャラクターである『アルフィノ・ルヴェユール』を務めていただいていました。アルフィノは僕が『FF14』を担当して立て直した以降の、『新生FF14』において、NPC側の主人公のような存在です。もちろん、主役はプレイヤーのみなさんなのですが、プレイヤーと共に歩み、成長していく双子のキャラクターのうちひとり(もうひとりはアリゼー・ルヴェユール/CV:村川梨衣)を演じていただいています。最初の収録から、もう12、3年くらい経ちましたね。 ただ、僕は立花さんとは現場でお会いしていなくて……。僕は収録に立ち会わないんです。僕が行ってしまうと、シナリオを担当したライターとのダブルディレクションになってしまうためです。事前にプロットや要点のチェックは済ませているので、実際に書いたスタッフのディレクションを優先してあげたいんです。だから、実は一番仲良くなったのは麻雀だと思います(笑)。『FF14』に麻雀を実装することになって、麻雀ができる人にお声掛けさせていただいて、そこからですよね? 立花慎之介(以下、立花):最初のころは、収録していて吉田さんのお名前を見かけることはあっても、実際に現場でお会いしたことがなかったんです。『FF14』は「プロデューサーレターLIVE(以下、PLL※)」に吉田さんが出演されたりしているから、画面越しに「この人なんだ」という認識はあったんですが、実際に会話をするようになったのは本当に麻雀以降です。だから、ここ3~4年でしょうか。基本的に麻雀は年1でやっているから、そのあとに食事に行ったりしながら、少しずつお話するようになりました。 ※吉田氏をはじめとする開発スタッフが出演して『FF14』の新情報などを伝えるライブ番組。 吉田:ただ、実は立花さんとは、声優になられる前からご縁があるんです。 立花:声優を始める前のことなんですが、スクウェア(現スクウェア・エニックス)でデバッガーをやっていたんです。そのときの取り仕切りをしていたバイトの方が、その後に『FF14』で宣伝担当になっていて、まさかのスクウェア・エニックス社内で久しぶりに再会するということがあったんです。当時はひとりのデバッガーだった僕が声優になって、『FF14』で声も担当できるということになり、縁と運命を感じています。逆に、このエピソードがあるから「スクウェアのデバッガーでした」と大きな声で言えるようにもなりましたね(笑)。 ――アルフィノは『蒼天のイシュガルド』(2015年リリース)で大きな役割を持っていたこともあり、収録から細かくディレクションがあったのかと思っていました。 吉田:僕は行っちゃうとダメなんですよ。収録に行くと、おそらく1から10まで……いや、100まで自分で指示してしまうので……。僕は、船頭が多くなってしまうのが一番ダメだと思っているんです。現場のライターに自信を持って収録のディレクションをしてほしいのです。僕が現場に行ってしまうと声優の皆さんは、どうしても僕の反応を見てしまうので、とにかく会わないようにしています。 立花:僕らはあくまで役者なので、収録では基本的に吉田さんには会わず、大きなイベントがあったときに初めて会うんです。そのときに「はじめまして」と言うのが面白いんですよね。役者同士で「吉田さんだ!」と認識するというか。 吉田:「いつもお世話になっています」「すみません、ごあいさつにも行かず」という感じですね(笑)。僕はもう、とにかく現場に張り付いてゲーム作っている人間です。プロデューサーとして放送に出たりすることのほうが多く見えるかもしれないのですが、基本的にひたすら現場の人間です。ディレクションに行っていない時間も、実装のチェックや実装のデータを見ていたりしています。そこは完全にお互いの信頼関係ですね。 それに、いつも最高の演技をしていただいていますから。スタッフも声優のみなさんに助けてもらって、ライターたちのディレクション能力も成長していっています。すごくいい関係でやらせていただいていると思います。 ――そんな信頼関係で結ばれた立花さんと吉田さんですが、お互いの「自分しか知らない側面」はありますか? 吉田:麻雀のときの立花さんは、勝負師だなと思います(笑)。当然ですが、役を演じていらっしゃるときからは一歩引きつつも、バラエティとしての麻雀でも本気になる瞬間、「ここだ」というときの雰囲気は、ご自身で独立されているからこその鋭さみたいな部分も感じます。「ここだ」ってなったときには完全に勝負に出る顔をしていますからね(笑)。その瞬間には多面性、多様性を立花さんから感じます。 立花:僕は逆に麻雀が終わったあと、ごはんのときなどの話になるのですが、吉田さんはものすごくいろいろな人から慕われてるんだなと感じます。吉田さんはカリスマ性があって引っ張っていくイメージで、ちょっと怖い面もあるのかなと感じるんですが、部下の人たちがすごく信頼して付いてきているんです。それに、みんなコンテンツ作りが楽しそうなんですよね。チームのバランスがすごく良くて、吉田さんが一番楽しそうに作っている……。そんな“素”は、おそらく飲み会でお酒が入っていないとなかなか見られないと思います。 それを踏まえて……一緒に麻雀を打ったとき、一緒の卓ではないときやアーカイブで見たとき、吉田さんが意外なところで“日和る”んですよね(笑)。「ここでは勝負するけど、ここでは守ったり日和ったりするんだ」って。常にカッコよくて、強く引っ張っていく吉田さんのイメージから、人間臭い部分が見えてくるなと。 吉田:そうですね、なんかもう放送のバランスとか言葉選びとか、色々考えちゃって全然いつも通りに打てない。チョンボしたり……あんな恥ずかしいことはないですよ(苦笑)。 ――おふたりの共通項としては、“東京ドームで歌った”(※)ということもありますよね。 ※2024年1月に東京で開催されたファンフェスティバル「FFXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」で両者とも歌う機会があった。 立花:本当に貴重な体験をさせていただきました。僕、あれ以降は「東京ドームアーティスト」って言っていますから(笑)。 吉田:素晴らしい。僕らは素人ですので、東京ドームでカラオケ歌った一般人って、たぶん僕とよーすぴ(齊藤陽介氏)だけですね(笑) 立花:これまでと違って罰ゲームではなく、優勝者のご褒美という形でしたからね。アーティストとして歌を歌うことはありますが、カラオケをやるというのは本当にないことですよ。 吉田:Day1で立花さんの「Still Love Her」の盛り上がりがあって、「Day2で歌うヤツ、マジ終わったな」と言っていたんですよ……。だけど、うちの取締役の齊藤が「立花さんに匹敵するには俺たちが行かなきゃ」って思ったらしいんです。そうしたら、麻雀のラストで本当にまくって優勝してしまって、僕は巻き込まれただけです。うちの齊藤の“持ってる”具合がすごいなと思って。 立花:Day1のときから「勝ったら吉Pを巻き込む」って言っていましたからね。 吉田:言っていたけど、「どうせ来ないでしょ」くらいに思っていたんですけどね……(笑)。 ・忘れられないアルフィノの“落ち込む”演技 ――おふたりは違った立場から『FF14』をはじめとしたゲーム作りに携わっていらっしゃいますが、そのなかで大切にしていることや、変わらないスタンスのようなものがあれば教えてください。 吉田:立花さんはどうですか? そういえば、僕は収録のディレクションをしないので、アルフィノについてどうのこうのと、話したことないですね(笑)。「演じていただいてありがとうございます」とは常にお話していますが、何ヶ月かに一度“アルフィノに戻る”というなかで、心がけていることはありますか。 立花:最初のころは難しかったところがあって、いまと比べてボイス量が絶対的に少ないということでした。当時は『FF14』をやっていなかったのですが、ボイスを収録する部分は本当にムービーの大事な一部分しかなくて……台本も全部だと長すぎるので、当時は部分ごとにもらっていて、「ここはこういう感じ」と説明されながら汲み取って膨らませていました。それに、ボイスが少ないと、次のバージョンまでに半年ほど間が空いたりするんです。そうすると、「前回どうだったっけ」となりますし、僕のボイスがないところで物語が展開して、 キャラクターたちは成長してるんですよ。その成長をどこまで反映するのか、というところですね。 あと、『FF14』の難しいところは時間軸です。時間の流れが明記されていないので、そこをどの程度表現するか。「どの程度やりましょうか」「前のままでいいですか」というディスカッションが最初に必要でした。でも一方で、『FF14』のすごいところは、ちゃんと説明してくれるところなんです。「この場面は前にこういうことがあって、この状態で、いまはこういう状況でここに来ています」と明確にしてくれるので、お芝居はすごくしやすいんです。サポートをすごくしっかりしてくれる制作体制なので、難しくても1回始まればスムーズに行く感じではありました。 ボイス量が増えていくと、物語は必然的に分かってきますし、アルフィノは中心人物としていろいろと関わってくることも多いです。そのなかで自分もゲームを始めることによって、ボイスされてないところが補完されて、どんどんやりやすくなっていって、『暁月のフィナーレ』の最後に差し掛かったときにはすんなり収録に入れました。その積み重ねは大事だったなと思います。 でも、一番難しかったのは、『新生エオルゼア』の終盤で1回心が折れるところ。自分のミスで一気に落ちてしまうところがあり、本当にボイス量も少なかったので、 どこまでやっていいのか、どこまで落ち込んでいるパターンなのか、収録は大変だった記憶があります。 吉田:あのときの僕は、開発現場でボイスを待っている側で、ボイスデータを組み込んで演出の最終調整をしたのですが、とにかくびっくりで。最初に聞いたときには感激しました。演技に感激しましたし、やりたかった挫折が表現されていたんです。アルフィノはすべてにおいて優秀で、別に悪気があったわけでもなく、素直に平和を……と考えていた。でも、どうしても“上から”なところがあって……。そのすべてが崩れ去った時、「人はこんなにも脆いんだ」というのも出したかったし、そこでオルシュファンが温かい飲み物を持ってきて……というところをやりたかったんです。あのときのアルフィノの「私は……」という一言の落ち込み具合は、絶対に忘れないです。 それがあってから、『暁月のフィナーレ』ではエスティニアンとプレイヤーに「ありがとう。これだけは言っておきたかったんだ」と。このふたつのセリフ、いまでも並べて聞くと……ダメですね、涙腺が。 立花:『暁月のフィナーレ』では、台本を読んでいる段階でフィナーレすぎて。「こんなにすべて回収していくの?」って家でひとりで感動していました。これはすごいなと。 吉田:当時、なにかの機会でお会いしたとき、「これ終わっちゃいませんか? 大丈夫ですか?」とおっしゃっていましたよね。 立花:しかも、イキり切っていたアルフィノの「エンタープライズ、発進!」を、ラグナロクで回収するという……。この流れ、「本当にすげえな!」と思っていました。 吉田:アルフィノは『新生エオルゼア』では頼まれてもいないのに「エンタープライズ、発進!」と言っていたのに、『暁月のフィナーレ』ではプレイヤーに選択肢が委ねられたうえで、「ここはアルフィノに」と言ってもらえますもんね(笑)。 立花:これだけ長くストーリーとして続くゲームは多くないんですが、そのひとつに声優経験のなかで携われたことは本当にうれしいです。 吉田:アルフィノは、まさに主人公ですからね。 ――立花さんからご覧になって、吉田さんの仕事ぶりで印象的なところはありますか。 立花:なんでもできるんだな、と思います。昨今、ゲームの配信番組にプロデューサーやディレクターが出るということは多くなってきていますが、しっかりユーザーの支持を得て、自分もちゃんとゲームができるという方は少ないんじゃないでしょうか。それだけでもすごいのに、さらに麻雀を打って、歌を歌って、Xのトレンドに入る。こんなプロデューサー、なかなかいないですよ(笑)。プロデューサーとしての引っ張っていく強さと、ユーザーに望まれるような姿も頑張って見せようとしてくれる。そんな姿を見ていると、「自分も頑張らなきゃ」となりますし、やっぱりすごい人だと思います。 ――「なんでもできる」という意味では、本日出演された『17LIVE』のようなライブ配信サービスでの配信もできるのではないでしょうか。やってみたい配信などがあれば教えてください。 吉田:いまはサラリーマンなので、配信をするというわけにもいかないんですが、ゲーム開発を引退したら、何かしら配信してみようかなとは思っています。ゲーム配信もいいのですが、「こんなことで困っているんだけど、どうしたらいい?」みたいな日々の悩みを解決するのも好きなんです。仕事全般でもゲーム作り全般でも、そんな話ができたらいいなと考えていたりします。 ゲーム配信については、やりたいんですが、たぶんそのゲームの仕様が気になっちゃって、ゲーム自体が進まない気がするんですよ……。「なんでこここうなった?」って、家でゲームをしていてもそうなんですよ(苦笑)。 立花:元デバッガーの僕も、ついデバッグしちゃいますね。 吉田:しますよね? たとえばキャラが木箱を乗せたり降ろしたりしても、「この挙動、どうしてこの仕様なんだろう? もうちょっとちゃんと判定したほうが気持ちいいと思うんだけどな……何か理由があったのかな?」みたいな感じです。これ、ゲーム開発の方からすると迷惑だと思うんですよね……。 立花:もう、職業病ですよ。僕の場合は極力、そうした部分が配信では出ないようにしています。やるなら配信外で(笑)。 吉田:「このセリフ、語尾をもっと丸めたほうが気持ち入ったのに」みたいな……でも、ダメなんですよ(笑)。ゲームしながらブツブツ言われたら、ゲームを作っているみなさんの迷惑になるでしょうし、やりすぎるとバグが出てしまうかもしれない。将来、ゲーム配信をするなら気を付けたいと思います。 立花:配信に関して、僕は前々からやろうと思いつつ、全然時間がなくてできてないのが、子育て勉強会の配信です。いま娘が5歳なので、同世代のいろいろなママさんパパさんから教えてもらいたい。知りたいこともたくさんあるんだけど、知りたくてもなかなか聞けない環境だったり……。「ママが言ってることがよくわかんないんだよね、パパ」っていう人がいっぱいいると思うんです。僕もそうですから。そういう悩みを共有しながら解決したり、ちょっとでも家族仲が良くなったり、夫婦仲が良くなったりするようにしたいんです。どうせなら、声優業界とはかけ離れたところのユーザーとつながりたいな、とは考えたりしています。 吉田:たしかに面白い。まったく違うジャンルの方々が集まりそうですね。 立花:そうするとまた違うつながりができて、違うものが生まれてくる。異文化交流が好きなんです。 ・ライブ配信には世界を変えられる可能性がある ――あらためて『〇〇な控え室』に出演した率直な感想を吉田さんにお聞きできればと思います。 吉田:立花さんの回しが、びっくりするくらいお上手でした! ゲストとして出演してトークをするのと、MC的に場を回すスキルは全然違うじゃないですか。しかも今日はお酒も入っていて、カンペもめっちゃ出ていましたから(笑)。すごいなと。だからもっとMCとしてご活躍されてもいいんじゃないかと感じたくらい。 立花:声優業界って、新人のほうが回す役割になることが多いんですよ。だから、新人のころに鍛えられたんです。たとえばライトノベルで主人公が男の子1人で、周りが女の子のイベントでは、男が必ずMCなんですよ。だから回さざるを得ないし、そこで回し方を勉強する。乙女ゲームに入ると、今度は周りが先輩ばかりになるので、先輩に囲まれてどう回すのかも学べる。先輩にMCをさせるのは声優業界的に「どうなのか」という感覚があって、年を取るとMCの座から離れることが多いんです。 吉田:「俺のほうが回せるからいいからいいよ」「無理にそんな気苦労しなくていいから」というのとは違うんですね。 立花:ベテランの先輩がMCになるパターンは、周りが新人だらけのときに、“仕切れる人”の立ち位置を作る場合ですね。でも、そのパターンはあまり多くないです。ただ、配信番組やアプリの配信で少人数のときは、MCができる声優は重宝されます。 吉田:それはそうですよね。一瞬、間が空いてしまったときに、それを埋められる嗅覚のようなものは、センスにもなってくると思います。 立花:それに、MCは基本的にゲストさんやほかのメンツを立てる立場なので、どう話を聞いていくのかということもあります。そういう意味では新人のころからやらせてもらえていたので、いまがあるのかもしれないですね。 ――逆に、立花さんには吉田さんに出演していただいた感想を伺えればと。 立花:すごくフランクに、フレンドリーにいろいろなお話が聞けたのですが、想定外だったのはひぐち君(髭男爵)が“イキってた”んですよ(笑)。僕らは気軽に好きなワインを選んでいいという話だったのに、ちゃんと当てないといけない流れになっていましたからね。でも、選んでいただいた日本のワインとか、知らないワインがたくさんあったので、本当に新しい発見になりました。吉田さんに新しいワインを「おいしい」と言っていただけたという意味では、『FF14』とワインという2つの内容をうまく出せてよかったなと思います。 吉田:僕はワインを飲んでいる間、一度も立花さんと目を合わせませんでした。「この状況、どうしたらいいですかね?」という気持ちが、目を合わせちゃうと伝わってしまうので……。「すごくガチなワイン当てになってるけど、どこまで濁せばいいんだろう」とずっと思いながら、「でもおいしい」と(笑)。 立花:僕はまだワインの知識が浅いので、吉田さんに頼っていた部分があるんです。でも、MCの立ち位置から見たとき、「吉田さん、これなにも言わないな」と思ったんです。それならもう、僕がひぐち君に振ることによって、とりあえずその場を収集していました。 吉田:想像以上に、ひぐち君が本気だったんですよ。ヒントを出しているつもりだったと思うんですが、『神の雫』の主人公じゃないんだから、僕たちにはわからないんです(笑)。 立花:良かったのは、ソムリエさんのワインの表現の仕方が実感できたことです。声優は言葉を扱う商売ですが、ソムリエさんのワインの味の表現が、まったくわからなかった。それがひぐち君の説明によって、「この香りがこうなんだ」と実感できたので、そこはうれしかったですね。 吉田:それだけひぐち君がワインを好きで、「この2人はワイン好きなんだな」と思ってもらえたということでもありますよね。ありがたいです。 ――ひぐち君との出会いにもなった今回の配信ですが、あらためてライブ配信に感じた魅力はありますか? 吉田:僕はゲーム業界で、まだライブ配信が主流ではない時代からやってきていますので、もともと可能性のあるものだとは思っていました。ただ、最近はもうちょっとうまい盛り上げ方がないかなと考えているところです。動画コンテンツ自体、炎上アクセスによるお金稼ぎに対するルールがもう少し決まらないと、社会が良くない方向に行ってしまうかもしれませんしね……。 ただ、皆さんの「発信したい」という気持ちだったり、ひとりでも「なにかを世界に訴えかけて、世界を変えられる可能性」には、ものすごいものがあると思います。立花さんも、パパママの情報交換や悩み解決をしたいとおっしゃっていましたが、自分の身の回りでできないからこそ配信で解決することはあると思いますし、すごく可能性があること。そういう方向で伸びてくれたらいいなと思います。 ――立花さんは本日の配信を経てどのような感想をお持ちですか? 立花:異文化交流の面白さが出たなと思っています。吉田さんはゲームの作り手側という立ち位置もそうですが、プロジェクトリーダーという高い地位の方、ソムリエ、そして会社経営者という、普段は絶対に同じフィールドにいない3人が、ワインを軸にして話をすることができた。その面白さがあったと思います。それに、吉田さんとは深いプライベートな話やゲーム作りの話をする機会がなかなかなかったですし、今回は意外な部分が聞けたりして楽しかったです。 でも、まだ2、3時間は全然いけますね。それくらいポテンシャルのある会でした。そもそも全然ワインが空いていないですから! ――それでは最後に、2024年後半に向けてチャレンジしたいことを教えてください。 吉田:仕事もプライベートだと思ってしまっているので、チャレンジしていないタイミングがないから、「これ」というものは……。とはいえ、『FF14』に限らず、 坂口博信さんと一緒にお仕事させていただいたり、強い結束力があるクリエイティブスタジオ3としてのチャレンジをしたりするなかで、作っている側も、遊んでくださるみなさんも、「とにかく面白くて楽しい」をより前に進めていきたいなと思っています。 この半年というよりも、いま種を撒き始めないと、その先数年にかかわってくるのがゲーム開発ですから、そのためにチャレンジしていく、という感じですね。 立花:完全なプライベートではどうですか? たとえば、趣味のスノーボードで行きたいところはないんですか? 吉田:行けたら行きたいところはいっぱいあるんですけど、 スノボ合宿させてほしいなって……。仕事はするから、遠隔で! 立花:ゾッとしてる人がいますが……。 吉田:山に籠もらせてほしいんです。で、朝イチのピステンとナイターでスノボ。昼間は仕事するから、なんとかしたい。でも最近、中国だと夏でも超デカい屋内スキー場があるんです。今度、中国・広州でファンフェスがあるんですが、会場から1時間くらいのところにあるんですよ。なんとか行きたいなって(笑)。 立花:たしかにそれは野望ですね。僕はここからの半年は、娘との幼稚園行事をちゃんとやりたいですね。幼稚園の年長なので、もう最後の1年なんです。来年から小学校なので、幼稚園でできることを、パパママと一緒にやりたいなと。運動会とかもあると思いますが、負けるのは嫌なので、本気で走ります(笑)。 吉田:良い目標ですね。意識しないと、「仕事かぶった!」ってなっちゃったりしますから。 立花:僕らの業種って早め早めに動いていて、下手したら来年もスケジュールが入っていたりするんですが、幼稚園や学校は4月にならないと年間行事がわからないんです。わかったときには「もう無理じゃん」ということもあったりして……。そのなかで行ける行事には参加していかないと、小学校でコミュニティが形成されてからは、親との時間がどんどん短くなっていきますからね。なるべく多く一緒にいられたらと思いますし、そのうえで、吉田さんに追いつけるように、冬は家族でスキー場に行きたいんです。 吉田:スキー場のすぐそばに、友人の経営する良い宿がありますので、ぜひタイミングを合わせて行きましょう! 立花:吉田さんはスノボをずっとやられていますが、僕や娘は始めたばかりなんですよ。 吉田:大丈夫、僕はみんなに滑れるようになってもらうために行っているみたいなものですから(笑)。これまでに5,60人は滑れるようになってくれたと思います。スケジュール調整していただけたら、お子さんたちにも教えてさしあげます。 立花:その様子を配信したらめちゃくちゃ面白いじゃないですか! 吉田:いやいや(笑)。でも、ヒカセン(※)を集めてやりたいですよね。「まずは板の付け方、立ち上がり方、ワンフットで軽く歩く/滑る、それからリフト……サイドスライドするところからやりましょう」って。皆さん間違いなく素直に取り組んでくださると思うので……。 ※光の戦士。『FF14』のプレイヤーたちの通称。 立花:それは吉田さんめがけてみんな滑ってきそうですね(笑)。 吉田:でも立花さん、娘さんの幼稚園行事に行かれるとき、僕から1個だけアドバイスがあるんです。僕も同じような形で、幼稚園の行事に行ったんですよ。 お父さんがハイハイして、娘や息子を背中に乗せて騎馬戦をやったんですが、お父さんたちが誰も寄ってきてくれなかったんです……。身なり、見た目は気を付けて行かれたほうがいいです。「パパ! なんか誰も来ない!」って言われて、すごく切ない思いをしたので……。 立花:(吉田のトレードマークであるアクセサリーを見ながら)その手で行ったんですか!? 吉田:はい……。スタイルは崩すもんじゃないなと……。子どもたちからは人気なんですよ、悪者としてね。「悪い奴だ! やっつけろ!」と言って全力で遊んでくれるんですけど、ちょっとお父さんウケはあまりよくなかったですね。 立花:たしかに気を付けたほうがいいですね。でも、僕もガラガラの服で行っちゃいます。 吉田:あはは、立花さんらしい! 面白いですね!(笑)。
片村光博