太陽光発電のウエストHD「今期も最高益更新」狙う事業構造
ウエストホールディングスは「脱炭素化」「グリーン電力調達」「非FIT」など新たな産業潮流を追い風に、日本全国に小さな自家消費型太陽光発電所を作っていくスキームで事業を推進している(写真提供:ウエストホールディングス)
東洋経済が中小型の成長期待企業500社を独自に選定した「東洋経済グロース500」。その構成企業の1つで、太陽光発電ビジネスを総合展開するウエストホールディングス(1407)が、10月20日に、前2021年8月期の決算説明会を開催。連続で最終利益の過去最高を更新した要因と、今2022年8月期にも営業利益15%増、最高益更新と高成長を見込む理由を探ってみたい。 太陽光発電ビジネスは、10年目に入った固定価格買い取り制度(FIT)が曲がり角を迎え、金融系の投資ファンドが個別の事業スキームにまとまった資金を投じる機会が増えつつあるように見直し機運が高まっている。大規模なメガソーラー建設は国内に適地が少ないことがボトルネックになっており、新規立地のプロジェクトの先行きは不透明だ。 となれば、ウエストホールディングスが注力する、稼働中の既存発電所を買い取って、補修改良などバリューアップを施して売却するという、メガソーラー再生スキームが、現実的で有効な手立ての1つ。そして、同社が急成長をもくろむグリーン電力による自家発電など官民挙げた新たな振興策について、その具体的な実現可能性への関心が集まっている。 そこで、決算説明資料にも掲載された「事業推進見取り図」と収益を牽引する3事業の売上実績と計画数値のグラフを参照しつつ最新動向を解き明かす。最後に株価見通しにも触れる。 まず10月15日に発表した前期業績を振り返る。売上高は2020年8月期と比べて9.7%増の679億3800万円、営業利益は同41.3%増の101億4800万円、純利益は同47.1%増の64億9500万円だった。 営業利益は、前期が71億8000万円だったので30億円弱の増加。この半分は、主柱の再生可能エネルギー事業(見取り図の青色矢印、売上高全体の50.5%を占める)が続伸したから。部門営業利益は48億7700万円と前期から15億円弱増えた。太陽光発電所の発電効率を高めるなど補修改良したバリューアップ案件の売却収益が貢献。仕入れた時点と売却した時点の価格差が大きい案件が複数重なって計上されたので部門営業利益が膨らんだ。 電力事業(見取り図の緑色矢印、売上高全体の44.5%を占める)は、部門営業利益27億6200万円と前期から7億円弱の増加を記録。電力小売りの販売量が新型コロナの影響で2期連続減少し、部門売上高は前期から1.8%減の302億円と大台を辛うじてキープ。ただ、採算は、電源調達価格を抑制的にコントロールできる仕入れ条件見直しの効果が前期に発現したことで改善した。 また、電力事業とともに、安定したストック収益源として注力する省エネルギー事業(見取り図には非掲載)は、施工実績が着実に積み上がり、部門営業利益9億2600万円と前期から3億円弱の増加を記録。なお、営業利益は、セグメント利益として事業ごとに割り振りしない調整額として、本社費用の配賦差額11億7600万円(前期比6億円強増)が含まれる。これらを合計すると、30億円弱の営業利益拡大の説明がつく。
本文:3,079文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
古庄 英一