楽天の3連勝を支えた「2番打者最強論」の威力
実は、楽天には、セイバーメトリクスの数値をしっかりと活用するフロントチームがあるが、一昨年も、大久保監督が、その理論を採用して「ウィーラー2番」を試したことがある。定着はしなかったが、チームには、元々、そういう発想を生み出す先進的な下地がある。 またオープン戦では、当初、藤田を7試合に起用するなどしてきたが、打率.216と調子が上がらず“つなぎ”がうまくいかなかったというチーム事情がある。3月20日の対西武戦で1試合だけ「2番・ペゲーロ」をテストしたが、この試合では、茂木とペゲーロの連打で三塁に走者を進め、犠飛で得点するパターンを2度、実現した。梨田監督の頭の中には、この得点パターンが、こびりついていたのではないか。 しかも、FAで西武から移籍してきた期待の岸がインフルでリタイヤした。 梨田監督は「先発がゲームを作れないと継投でやりくりするには限界がある」と語っていたが、2番最強論で超攻撃的布陣を敷き、得点力をアップすることで投手力をカバーしようと考えたのかもしれない。 ペゲーロは、昨季途中入団して51試合に出場、打率.279、10本、26打点。183打数で67三振と3回に一度は三振していた。その荒さを考えると、本来、2番打者には適していないとされるバッターだが、大胆な発想が、今のところ吉と出ている。 過去には日本でも2番最強打者はいた。古くは1957年の西鉄ライオンズの流線型打線である。2番に、その年、打率.287、18本、59打点の故・豊田泰光氏を置いたのだ。豊田氏の18本は、3番の中西太氏の24本に次ぐチーム2番目の本塁打数。名将、三原脩監督の発案で生まれたマジック打線で、日本シリーズでは巨人を4勝1分で圧倒した。その後、日ハムでの小笠原道大(現中日2軍監督)、南海ホークスの山本カズという左の強打者を2番に置くケースもあったが、2番最強論が定着することはなかった。 パ・リーグの野球に詳しい評論家の池田親興氏は、こんな見方をしている。 「楽天は上位打線で点を取るという意図を持った非常に面白い打線を組み、それが機能している。先取点をとり、序盤に点差を広げて、不安定な投手陣に余裕をもたせ継投で逃げ切ろうというプランなのだろう。投手の立場からすれば、バントがなく、いきなりクリーンナップが2番からスタートするのだから恐怖感を抱くしプレッシャーがかかる。 ただギャンブル的な打線だともいえる。ペゲーロには左打者のメリットはあるがホームランもあるが三振も併殺打もある。長いシーズンで見たときに、どれだけの結果につながるのか。ベンチも、どれだけ我慢するのか、調子を見ながら2番も再考していくのか、ベンチのマネジメントにも注目したい」 今日4日から始まる本拠地3連戦では、ソフトバンクは、千賀、武田、バンデンハークというWBC代表組が先発してくる。梨田監督は「3人使うのは違反じゃないの?」と冗談を飛ばしたそうだが、最強2番のペゲーロを置いた革命的な打線の真価を問われることになる。