「またトラ」に導いたマーケティング戦略とは?(米大統領選解説)
ハリス陣営の「自滅」は人材難
これまで数々の米大統領選の予測を的中させてきた渡瀬氏も、今回の大統領選の結果は「出るのが早かった」と映ります。 直前の世論調査で、激戦区とされる「サンベルト」(南部のノースカロライナ州とジョージア州、南西部のアリゾナ州と西部のネバダ州)では、「どちらかというとトランプ」、製造業が集積する「ラストベルト」(東部ペンシルベニア州と中西部のミシガン州とウィスコンシン州)は「微妙にトランプ」ぐらい。ここから、「トランプが勝つかなというのは数字を見ていてもわかる話だったと思う」と振り返ります。 渡瀬氏は「世論調査は過去から民主党側を過大評価する傾向がある」と指摘します。その上で「ラストベルトでこれだけ早々に数字を出して勝つのは大勝といっていい」とし、「ハリスさんの自滅です」と断じます。 こうなった理由は、一般的には民主党の大統領候補がバイデン氏からハリス氏に変えたタイミングが遅かったという意見がありますが、渡瀬氏は民主党の人材不足と、党の左傾化を理由に挙げます。 大統領候補者は基本、州知事がやるもの。州で実績を上げて、その実績をもとに大統領候補になるのが多いとのこと。 ところが民主党では、州として民主党が強い地域の知事がいるものの、「あんまりイケてる州知事がいないんです」と、渡瀬氏は説明します。 一方共和党には、接戦州の州知事がたくさんいます。今回は「人材がたくさんいすぎて目立たないから、トランプで行こうという差があった」と指摘します。 そして、ハリス陣営は、なぜ黒人とヒスパニックの票を取れなかったのか。 渡瀬氏は、「バイデンを最後まで守ったのは、アフリカ系の黒人議員連盟と米ヒスパニック議員連盟」と構図を解説。左派の派閥に推されたハリス氏が出た結果、民主党の中にもしこりが残ったと推察します。
「不正選挙」ではない、アメリカの選挙制度の特殊性
最後に、前回の大統領選では不正選挙の疑いが長期化し、正式な大統領決定が遅くなりました。今回はどうなるのでしょう。 渡瀬氏は、ここにもアメリカの大統領選の特徴があると解説します。 まず、アメリカでは州ごとに公職選挙法がすべて異なります。前回の結果を踏まえ、郵送投票のカウントを早期化する州が増えたとのことですが、 ネバダ州とアリゾナ州では変更しなかったとのこと。しかもネバダ州では、郵送で届いた票の確認作業で筆跡が異なると判定した場合、有権者の自宅を訪問し、再投票を促すとしています。結果、開票が遅くなるのは、法律上やむを得ないことと言えます。 渡瀬氏「ついでに言うとね、不正選挙、なんで不正選挙だって言うと思います?」 アメリカでは、選挙結果に納得せずに不正選挙を訴えると、投票の数え直しが要求できるという制度になっています。渡瀬氏によると、選挙対策本部向けに「選挙が終わった後に、どうやって相手の票を減らすか講座がある」とのこと。 また、アメリカの選挙管理委員会のトップは、州ごとに選挙で選ばれます。 渡瀬氏「選管に色がついている国なのだから、日本人と同じ感覚で見てはいけない。最初のルールを決めたり、相手の票をどうやって減らすかも政治闘争で行うのがアメリカ。不正選挙があるかどうかなんてそもそも論外なんです」 渡瀬氏が「日本からアメリカへ選挙監視団を送った方がいいと思う」と苦笑するほど、「選挙のルールに関してはダメな国だと思っていいと思う」というアメリカですが、今回の選挙が不正で長引くことはないとコメント。すでに2026年の上院下院選挙、2028年の大統領選挙を見据えて、トランプ政権の閣僚人事なども組まれていると予想されます。