9月は“魔の季節”? 中学受験で「父から暴力」13.6%、「母から」12.8%…構造的要因と対策を考える
中学受験の過程で親からの暴言や暴力が発生する背景について、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「中学受験では大量のプリント管理や模試の送迎、併願プランの策定など、親が関わる局面が多く、自身と子どもを重ねてしまいがちだ」と説明する。 「昔の教育ママ・パパには『自分が学歴に恵まれなかったので、子どもには学歴で損をさせたくない』というパターンも多かった。ただ最近は、高学歴な親が『自分は結果を出せたのに、どうして子どものお前がこんな簡単なこともできないんだ?』と圧をかけるケースも増えている。自分の成功体験を子どもで再現しようとして、期待とのギャップが暴言・暴力に転化してしまうことも少なくないのではないか」 また「勉強=頑張ればできるもの」という誤った認識も要因の一つであると解説した。 「スポーツや芸能などの世界では『才能』が大切だと理解できる人でも、こと勉強に関しては『頑張ればできる』と考えてしまいがちだ。実際には勉強にも、スポーツなどと同じく向き不向きがある。長時間机にかじりつくには体力が必要だし、中学入学後から学力が“後伸び”するタイプの子もいる。そういった点を度外視して『なんでお前はできないんだ?』という態度をとってはいけない」 その上で神庭氏は「今の時期は特に注意が必要だ」と警鐘を鳴らす。 「親は夏期講習で一生懸命勉強したのだから『きっと成績が上がるはず』と期待してしまうが、ライバルたちも同じように勉強しているため、夏休み明けの模試でもなかなか偏差値が上がらない。これで保護者は気落ちしてしまう。中学受験生の多くは9月から志望校の過去問を解き始めるが、この時期だと教科によっては5割とか3割くらいしか得点できない、なんてこともザラにある。それを知らずに焦ってしまう親もいる」 「大人と子どもでは時間感覚が全然違う。親は『もう2学期だよ! もうすぐ受験だよ』とヤキモキしているのに、子どもは『まだずいぶん先だな』と呑気に構え、なかなかスイッチが入らない。9月から年末にかけての今の時期は、親のイライラがピークに達する、中学受験の“魔の季節”といえる」 さらに、神庭氏は「そもそも子どもに『自走』を求めることには無理がある」と説明した。 「中学受験では、自分から主体的に勉強すること、『自走』することが大切だと言われるが、大人の世界を見渡してみても、指示待ちではなく自分で考えて動ける会社員はそんなにいない。一部、例外的に自走できる子もいるかもしれないが、大人にもできないことを小学生の子どもに過度に求めるべきではない」 「子どもが家でダラダラしているのを見ると、イラついてしまう親もいると思うが、塾でたくさん勉強して帰ってきた後に、家でも息抜きができないとしたら、子どもはどこでリラックスすればいいのか? 小学生の子どもが1日に何時間も勉強しているだけで十分偉い。そこを褒めてあげてほしい」 「受験期に受けた暴言・暴力は一生引きずる。無理をして中学受験で良い結果を出したとしても、名門中学に合格したことが人生のピークになってしまっては悲しい。その後の人生の方がずっと長い。中学受験そのものはけっして悪いものではない。どうか親子で適切な距離感を保って、良い中学受験にしてほしい」 (『ABEMAヒルズ』より)