杉並・母子死亡事故「踏み間違い」元自動車整備士に禁錮5年求刑 遺族「憎しみや恨みはない」 安全対策には強い疑問
被害者遺族「憎しみや恨みはない」
公判では、被害者遺族の意見陳述も、遺族側の代理人弁護士が代読するかたちで行われた。 亡くなった母子の夫、そして父である男性は、被告に対して「悔しさや残念な気持ちはあるものの、事故当初から憎しみや恨みはない」と言及。その上で、「事故を起こしたことは彼(被告)の本意でないにせよ、しっかりと罪に向き合って償ってほしい。その後はいち早く社会復帰して、少しでも世の中のためになる行動をしてほしい」と述べた。 一方、出庫時に誘導員を配置していなかったことや、被告と勤務先の自動車整備工場が今回のような事故が起きた際の保険に入っていなかったことなど、安全対策への強い疑問も示された。 「他人の車を預かる以上、ミスがある前提で安全対策するべきだった。その備えであるはずの保険に入っていなかったことに驚がくしている。人通りの多い路面店で平気で車を預かり整備していた、そういう工場は他にもたくさんあるのではないか。国や自治体は、自動車整備会社の保険加入を義務化してほしい」 これらの安全対策については、裁判所も被告人に確認するなど、関心を示している様子だった。
「亡くなったふたりの未来をつぶしてしまった」
検察側は「過失、被害結果は極めて重大。遺族の喪失感や絶望感は察するに余りある」「被告が自白し、反省していることを考慮しても、実刑による徹底した矯正教育が必要」などとして禁錮5年を求刑。 一方、弁護側は「アクセルとブレーキの踏み間違いという基本動作のミスなので、過失が小さいとは評価できないが、運転行為自体が悪質とは言えない」「事件直後から事故と向き合い続け、深く反省している。捜査にも協力的だ」などとして、執行猶予付きの判決が相当だと主張した。 被告は被害者や遺族に対し「私の不注意のせいで亡くなったふたりの未来をつぶしてしまった。(被害者と遺族が)今まで築き上げてきたものを奪ってしまった。申し訳ありません」と、絞りだすように語った。
弁護士JP編集部