錦織の全仏ベスト16の本当の意義
結局、クレーコートが苦手であることも、過去に欠場が多かったことも、そこに〈フィジカル〉という共通するキーワードが浮かんでくる。そのフィジカルこそ、錦織がトップレベルで戦い続けるために課題にしてきたことだった。トレーニングはもちろんだが、スケジューリングの改善にも取り組んできた。特に今年は、体のために大会数を減らし、グランドスラム大会の前の週は試合に出ないといった方針でスケジュールを組んでいる。今年はこの全仏が10大会目だが、昨年は腹筋を痛めた4月のバルセロナ大会がすでに9大会目だった。そしてその成果には手応えを感じているという。 「トレーニングも合わせて成果は出ていると思いますね。今も膝と脇腹の痛みを抱えた状態ですけど、痛みがある以外は体も強くなってきていると感じています。今大会も最初の4試合はしっかり戦って勝てたので。スケジュールに関しては、体がそんなに強くない自分に合わせて大会数を減らしましたけど、その中で結果を出していかないといけないと思ってます」 今も痛みがある、という言葉が引っかかるかもしれないが、錦織の言う「痛み」というのはほぼ慢性化しているもののようで、棄権するとか治療に専念するとか、今のところそういったレベルのものではなさそうだ。 休む間もなく来週からは芝に舞台を移し、3週間後にはウィンブルドンが開幕する。テニスプレーヤーの日常の、なんとハードなことか。その中で、〈弱点〉を一つずつ克服しながらトップに挑む23歳の姿は、ただただ頼もしい。 (文責・山口奈緒美/テニスライター)