トランプ勝利が招く国際混乱…米中関係、ウクライナ戦争、中東情勢すべてが波乱含み
「米国史上いまだかつてない勝利だ」──。接戦にもつれると予想された米大統領選は、あっさりと共和党のトランプ前大統領の返り咲きで幕切れ。投開票が進む中、トランプは激戦3州を制した段階で勝利を宣言した。「私は戦争を始めるのではなく、止めるのだ」と胸を張ったが、トランプ復活は国際情勢に何をもたらすのか。 トランプ元愛人 口止め料返金の代わりに“不倫暴露”を希望(2013年) ■米中関係 「タリフ(関税)マン」を自称するトランプは、輸入品に対する一律10~20%への関税引き上げを公約のひとつに掲げている。特に中国への強硬姿勢は第1次政権から筋金入り。中国からの輸入品には一律60%の関税をかける方針を掲げ、再度の米中貿易戦争も辞さない構えだ。 とはいえ、関税引き上げは米国内のインフレの火に油を注ぎかねない。トランプは民主党政権のインフレ対策を「お粗末」と批判してきただけに、公約通り突っ走るかは疑問符が付く。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。 「トランプ氏は表面上、対中強硬路線を打ち出していますが、自身が所有する不動産に中国政府や国営企業から多額の支払いがあったことが明らかになっています。いわば中国の政府筋から支援を受けているわけで、関税を引き上げるとしても、別の分野で中国のプラスになる材料を提示するのではないか。お得意の『ディール(取引)』を試みるだろうと思います」 中国外務省の毛寧副報道局長は6日、今後の米中関係について「ウィンウィンの協力の原則に基づいて今後も対応する」とコメントした。ディールの余地はありそうだ。
「力による現状変更」を認める
■ウクライナ戦争 ウクライナへ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は、トランプ復活にほくそ笑んでいるに違いない。トランプが「ウクライナ支援はカネの無駄」と繰り返し、支援継続に消極姿勢を貫いてきたからだ。実際、トランプはウクライナ戦争について「私なら24時間以内に終わらせる」と豪語する一方、ウクライナの勝利を望むかどうかについては明言していない。 米国の後ろ盾を失いつつあるウクライナのゼレンスキー大統領は6日、自身のXにトランプへの祝意を投稿。 〈トランプ大統領の『力による平和』への取り組みに感謝しています〉〈これこそがウクライナに平和をもたらすのであって、共に(和平を)実行に移すことを期待します〉などと協力を呼びかけた。 国際ジャーナリストの春名幹男氏が言う。 「米国の援助なくしてウクライナは戦争を続けられません。トランプ氏が言う『戦争終結』は結局、ロシアが侵略して奪った地域を固定化すること、つまりゼレンスキー大統領の妥協を引き出すことでしょう。『力による平和』どころか、『力による現状変更』を認めることになってしまいかねません」 ■中東情勢 イスラム組織との戦闘と称し、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザや隣国レバノンへ侵攻中。地元保健当局によると、ガザでは約4万3400人、レバノンでは約3000人が犠牲になったという。パレスチナ自治区への入植に対する制裁も歯止めになっていない。 「イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ氏の再選に『歴史上、最高の復活』と賛辞を送りました。それほどまでにトランプ氏は“親イスラエル”なのです。かつてエルサレムをイスラエルの首都と承認したように、イスラエルの望むような支援を与え続けるのでしょう」(五野井郁夫氏=前出) パレスチナ住民の生存が脅かされる惨状に拍車をかけかねない。 ◇ ◇ ◇ 11月6日の日経平均株価は大幅続伸。一時1100円超の上げ幅を記録し、前日比1005円高の3万9480円で取引を終えた。結果、マーケットの期待通り、米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利。「トランプ買い」はいつまで続くのか。●関連記事【もっと読む】『米大統領選勝利で株価急騰1000円高!「トランプ買い」いつまで続く? 専門家が先行き占う』で詳しく報じている。