問われる国の公文書管理 アスベスト労災記録の誤廃棄めぐる賠償確定 デジタル化で紛失も懸念
◆判決が求めた石綿記録の徹底管理
同省労働基準局総務課によれば、実際に今回デジタル化するのは労働局ないし監督署の計2カ所。契約手続き中として請け負い業者名などは明らかにされなかった。 今回の委託はマニュアル作成が目的のため、「監督署の文書がどの程度あるのか委託業者が調査したうえで、1回スキャニング作業かけてみて、こうやると大変とか課題を洗い出してマニュアルに落とし込んでいくことになる」(労働基準局総務課)との流れだ。 そのうえで「こういう文書はこういうやりかたで電子化できますと、見読性や抜け・漏れがないようにしっかりやりましょうとふまえたうえでマニュアルを提案してもらうことになる」(同)。 (1)は電子化作業の前に対象文書がどれだけあるか調査してから実施するので問題ないというのだが、結局は現状の管理が悪ければ、そこでやはり抜け落ちてしまう可能性が否定できない。 (2)の電子化作業で失われる問題については、「委託ですので、スキャンかけたものと現物について抜けがないか、請け負い業者が責任を持って目視で確認します」(同)という。同省の認識が甘いと感じる。どうしても人為的ミスは起きる。永年保管とするよう手順まで示して通達したにもかかわらず、誤廃棄が続いている同省のずさんな文書管理の実態が証明している。それをどのようになくすのか。 同省は「委託なので責任持ってやっていただく形になる」(同)との認識だ。 そのうえで、「業者選定の評価項目で類似事業の実績のほか、納品前の確認作業で提案されているか。抜け・漏れがないかや電子化文書の品質確認などちゃんと提案がされているか評価しています。作業前にスキャンした人以外で複数回チェックをすることが提案されると思っております」(同)と補足した。また「納品されれば検品も職員がしますし、場合によっては納品後も確認が必要になるかもしれない」ともいうのだが、結局は今年度の事業しだいという。 (3)は「電子化後に返却されることになっており廃棄はされない」との答えだ。 返却後いつ捨ててもよいことになっているのではないかと指摘し、具体的にどのくらいは捨てないよう求めるのか聞くと、「安易に電子化してすぐ捨てますという考えはない。おっしゃるような抜け・漏れがないよう電子化したうえで考えることになると思う」と今後の検討とした。 結局今回の委託がマニュアル作成のため、「しっかりマニュアルをつくって労働局で対応していただく」(同)のが基本という。 継続的に外部委託で実施するのかは「予算の兼ね合いもある」(同)とあいまいだ。監督署などで臨時職員を雇ってやらせることもあるのかと聞くと、「明確に決まっていませんが、職員がやっていただくときにも資するようなものにしたい」(同)と否定しなかった。 「マニュアルには見読性や抜け・漏れがないようにしっかりやりましょうとして、その確認も当然入ってくる。どういう形で入るかはまだわかりませんが」(同) とくに原本の廃棄については、「具体的にどうするかは今後検討します」としつつも、「すぐ捨てましょうという判断にはならないとはなっております。重要な文書とは重々認識していますので、そこはよくよく検討したいと思います」(同)と慎重に答えた。 ただし現状では具体性に欠けることに変わりはない。実際に出てきたマニュアルしだいであり、その内容がわからない以上はあいまいな返答に終始せざるを得ないというのが現状か。 弁護団がコメントしているように、今回の判決確定をふまえ、国は徹底した管理に向けて体制整備をしていく必要がある。弁護団や被害者団体など関係者が国と話し合うなどして安心できる仕組みを構築することが重要だ。