『マル秘の密子さん』松雪泰子が隠した新たな真実 密子と鞠子を救った“レモンの君”の正体
「ヒーローなんてスキャンダル一つで悪人に変わるんですよ。たとえ、そのスキャンダルが事実ではなくても」 【写真】かき氷を食べる密子(福原遥)と遥人(上杉柊平) 「最初に小さな火をつければ、あとは勝手に燃え広がる」 風刺をきかせた密子(福原遥)の台詞にドキッとさせられた人も多いだろう。『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)第9話は、真偽の不確かな情報や思い込みではなく、自分の目で確かめたものを信じることの大切さを実感する回だった。 半年前の火災事故が、謙一(神保悟志)に恩を売ろうとした夏(松雪泰子)による自作自演の可能性が浮上した第8話。そのことで夏を問い詰めた密子はクビを宣告され、社内への立ち入りを禁止されてしまった。火事で姉・鞠子(泉里香)を失った密子は復讐を決意。遥人(上杉柊平)の協力を得て、夏を社長の座から引きずり降ろすためにあらゆる手を尽くす。だが、すべて夏に先回りされ、潰されてしまうのだった。 追い詰められた密子は夏にナイフを突きつけた上で「あなたが姉を殺したんですか?」と迫る。これまでも彼女は目的のためなら手段を選ばない主義で、躊躇いもなく人にナイフや注射器を向けてきた。しかし、今までと異なるのはその表情。恨んでいるはずの夏に密子はすがるような目を向ける。お願いだから、鞠子の殺害を否定してほしいと言わんばかりの目だ。 それに気づいた遥人は「君は夏さんのことが好きなんだよ」と密子を抱きしめる。遥人の言う通り、今の密子は鞠子のことだけではなく、信じていた夏に裏切られたことに対しても傷ついていた。幼い頃、自分を父親から守ってくれた姉を助けられなかったことに苦しみ、姉を殺した犯人に復讐するためだけに生きてきた密子。その重荷を一緒に背負おうとしてくれた夏のことを、密子はいつの間にか好きになっていたのだ。遥人もまた、当初は密子と敵対していたが、社長になることにこだわっていた自分を結果的に変えてくれた彼女に対してほのかな愛情が芽生え始めていた。そんな遥人だからこそ、密子の複雑な感情に寄り添うことができたのだろう。 今回の一件でグッと距離が縮まった密子と遥人。千秋(桜井日奈子)が「夢の推しカプじゃん!」「尊すぎる!」と興奮する一方で、焦る気持ちを抑えきれないのが智(清水尋也)だ。遥人と同様に、密子に惹かれていた智は自分も力になりたくて「俺が密子さんを助けたいのは、好きだからだよ」と告白。だが、自分の立場が危うくなる覚悟で密子に力を貸す遥人に負けを悟ったのだろう。前に密子を助けたのは自分ではないこと、鞠子を資材から守ったのも自分ではないことを明かす。姉妹を危険から救い出した“レモンの君”は、遥人だった。 それが分かった瞬間、まだ密子の中で少しだけ残っていた遥人への疑いの気持ちが晴れる。これまで密子は遥人を悪人だと決めつけ、憎しみの目で見ていたから気づけなかっただけで、彼が本当は困っている人を放っておけないヒーローの心を持った人間である証拠は至る所に散りばめられていた。 同じように夏を憎しみの目で見るのではなく、信じていた時と同じ目で火災現場の映像を見直してみた時、新たな真実が見える。火事の時、確かに鞠子は夏に向かって「助けて」と叫んだが、それは自分のことではなく、謙一のことだった。夏は謙一を救い出した後、鞠子を助けに戻ろうとしたが、直後に爆発が起こってしまったのだ。また、夏の元に「火事に近づいた者は殺す」という文書と共に、密子の写真が同封された封筒が差出人不明で届いていたことも明らかになる。密子を守るために、自分が悪者になってまでも彼女を突き放した夏。そんな彼女の姿と、superflyが歌うテーマソング「Charade」の〈oh blue お人好しが上手〉という歌詞がリンクする。 鞠子にしても夏にしても、密子の周りにいる人間はお人好しばかり。彼女が最も憎んでいるのは、そんな彼女たちが傷つかなければならない世の中なのだろう。では、果たして鞠子の命を奪い、今もなお夏の優しさに漬け込んで苦しめている犯人は誰なのだろうか。 そのヒントとなるのが、智が夏に渡したリスト。ファイルには「こちらのリストを確認いただき9月17日の打ち合わせまでにご意見を伺いたく思います」というメモが付箋で貼ってある。その中にある数字の「7」の書き方が、鞠子の残した裏帳簿メモに書かれた「7」と共通しているのだ。もし裏帳簿の存在を知られた誰かが鞠子を口封じに殺したのだとすれば、付箋を貼った人間が犯人である可能性が高い。普通に考えれば、疑わしいのはリストを渡した本人である智だろう。密子から優しいと言われた智の「俺は別に優しくなんかないよ」という言葉や沈んだ表情も意味深で気になるところ。夏が社長室に入る直前で呼び止め、中にいる密子たちをそれとなく助けたようにも見えたが、単なる偶然の可能性もある。何より、前回の「大事なのは、あの火災事故で、一番得をしたのは誰なのか?ということです」という坂東(黒羽麻璃央)の言葉。火災事故で得をしたのは夏だけじゃない。夏が謙一を助けたことで、智も九条開発に就職が決まり、さらには社長の息子という地位まで手に入れているのだ。 おそらく夏は信じたくない気持ちもありつつ、智に付箋のメモを書いた人物について尋ねに行こうとしたのだろう。その矢先、美樹(渡辺真起子)からの襲撃に遭う。次週はついに最終回。どんな真実が明らかになろうと、密子と夏が難局を抜けてまた一緒にご褒美のかき氷を食べられることを願っている。
苫とり子