薬物問題で部員2人逮捕の日大アメフト部が今季出場停止 それでも廃部に至らない学内の「アメフト閥」
関東学生アメリカンフットボール連盟(関東アメフト学連)は8日、臨時理事会を開き、部員2人が大麻取締法違反の疑いなどで逮捕された日大アメフト部の今季の出場資格停止、並びに1部TOP8から来季1部BIG8への降格を発表した。 【決定的瞬間】「邪魔だ!」…本誌カメラマンを払いのける日大・元理事長 関東アメフト学連規律委員会がまとめた調査報告書は「権限や責任をきちんと自覚することなく、軽率かつ無責任な発言によってアメフト部の指導陣の対応方針を不適切な方向に向かわせてしまった。組織としての過失責任は小さくない」と踏み込んだ内容となった。 具体的には部の顧問の独断専行について2点を指摘している。 ①顧問は部員による違法薬物使用の疑いを把握した後、所轄の警察署に相談したが「立件が困難で警察は動かない」との誤った認識を他の執行部と共有し、対応を遅らせた。 ②顧問が監督の人選に関わる権限を持っていた。 特定の人物によってアメフト部の運営がなされ、外部からの介入を許さない閉鎖的な体質を断罪した。 では、顧問とは誰なのか。報告書に個人名は書かれていないが、アメフト部元監督で現在は大学事務局の要職に就いているOBとみられる。 規律委員会は、部の指導者6人と日大競技スポーツ部長の計7人を聴取したが、逮捕された部員などへの聴取は、日大側が捜査中との理由でできなかった。 報告書には「大麻等の違法薬物を使用した可能性があると考えられる部員3名及び卒業生と思われる元部員5名の合計8名から事情聴取を実施すべきと考え、日大アメフト部に対し、これらの者の事情聴取実施の調整を要請した。しかし、日大側の協力は得られず、これらの部員及び元部員からの事情聴取を実施していない」と記されている。 アメフト部にとどまらず、大学側にも全容を明らかにしようという姿勢がみられない。ここまできたら、アメフト部廃部という見方がある。
「今の大学は企業と同様にインテグリティーを問われ、誠実で法令遵守、学問の府としての倫理の遂行を求められています。日大はまったく時代の流れを理解していません」 長年にわたり、学生アメフト界の指導にあたる大学関係者は続ける。 「部員には大学の代表、他の学生の手本になれ、と言い聞かせています。アメフト部員以前に学生ですから、きちんと講義に出席するのは当然です。単位がとれなかったら、試合はもちろん練習にも参加させません。ミーティングでは競技以外、例えば身の回りのことなどについて文章を書き、討論もします。人間教育っていえば口幅ったいですけどね。実際、ハードルが高いので試行錯誤の繰り返しです」 文武両道なんていうキレイごとではなく、学生としての本分を尽くす。卒業後、一人の社会人として生きていけるように指導者も学生たちと考え、悩みながら前へ進んでいるという。それでも前出の大学関係者はこう続ける。 「日大の純血主義や上意下達の体質は何も変わらないでしょうから、アメフト部の廃部なんてあり得ません」 関学・京大・立命のライバル争いを描いた『アメフト三国志』(産経出版)の監修に携わったスポーツライターの津田俊樹氏も同調する。 「日大は’18年5月に起きた『悪質タックル事件』以降も競技スポーツ部が大学の中枢を占めて権力を持ち続けています。内田正人・元監督と井上奨・元コーチを懲戒解雇しながら訴訟に持ち込まれると和解、内田元監督には退職金が支払われ、井上コーチは大学職員として復帰しています。今回の薬物事件の対応は田中英寿元理事長の独裁体制が完全に崩壊していない証です。頭を下げて批判の嵐が通り過ぎていくのをじっと耐えているのでしょう。 日大にとってアメフト部は相撲部や陸上部と並んで大学スポーツを代表する名門クラブで、特にスポーツのトップレベルの高校生にとっては憧れの存在でしたから、そのことが少なからず受験生を集めることにつながっていました。だから日大としても簡単には廃部にできない。一部の学内関係者が廃部を唱えるかもしれませんが、競技スポーツ部やOBの圧力に屈して雲散霧消するでしょう」 大学日本一を決める甲子園ボウル優勝21回を誇る日大の愛称はフェニックス。どうやら、その名の通りアメフト部は永遠のようだ。
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