中日・井上一樹新監督

【球界ここだけの話】中日は今季限りで退任した立浪和義監督の後任として井上一樹新監督が就任。12日にはナゴヤ球場で秋季練習を開始したナインの前に立ち、全体への訓示として「同じ方向を向いていないと勝てない。俺の好きな、やる気や元気がみなぎる選手になってほしい」と声をかけた。 【写真】井上一樹新監督、選手たちに声かけ「俺の好きな選手になれ」 就任早々、高いハードルが目の前に迫る。2022年からの3年契約が一区切りとなるライデル・マルティネス投手（28）の去就だ。今季も2勝3敗43セーブ、防御率1・09の成績を挙げて2年ぶり2度目の最多セーブのタイトルを獲得。球界トップの守護神だけに、推定年俸2億円から大きく跳ね上がることは避けられず、他球団との争奪戦になる可能性をはらんでいる。 「絶対的なストッパーなので残ってほしいのは紛れもない事実。外国人選手は契約の関係上、僕らでも手出しのできない部分もある」 キューバ国籍のマルティネスの場合はキューバ政府との交渉が第一。球団と選手間だけのやり取りとは違い、簡単にはいかない問題なのは承知している。それでも大事なのは本人の気持ちを来季もドラゴンズへと向けることだ。 「立浪さんがライデルに対して注ぎ込んできた愛情を僕が代わりになったところで、立浪さんほどの愛情を感じないんじゃないか、ということがないように、丁寧に接していきたい」 立浪氏はマルティネスと信頼関係を築いた。オフの時期には直接話し合い、家族と過ごしたい意向をくみ取り、沖縄のキャンプ地入りの時期を2週間以上遅らせることも許可した。マルティネスが昨季終盤に臀部を痛めたときには、セーブ王のタイトル獲得よりも帰国しての治療専念を促した。 自身の立場を優先する配慮に支えられ、成功を収めたマルティネスも「監督には永遠に感謝し続ける」と立浪氏への思いを吐露した。 井上新監督は「僕はスペイン語ができないから通訳を介してになるが、伝える機会がどういった形になるかわからないが、策がないか探ってみる」と直談判も辞さない意向で、得意のコミュニケーション力で引き留めに動く考えだ。 2軍監督だった今季、2軍落ちしたベテラン選手には面と向かって「お前たちがやっている姿を見た若い連中が『僕らはまだまだ力がないのに、あの先輩たちがこれだけやっているんだ』と思うようなものを見せろ。『ああ、これぐらいでいいんだ』と思わせないように」と念押ししてきた。選手に自ら働きかけて向き合うのは得意分野。阪神でのヘッドコーチ時代も、シーズンオフでもLINEなどのツールを使って密に選手と連絡を取っていた。

大島宇一郎オーナーが「モチベーターとしての力は非常に高い」と評価する新指揮官。ナインに向けた訓示で掲げたように、チーム全員が同じ方向を向くようにするため、まずは守護神引き留めという最初のハードルクリアに挑む。（上阪正人）