大規模停電で注目、UPSって何?
10月12日午後、東京都内で大規模な停電事故が発生し、豊島区や練馬区などを含め、のべ約58万件の停電が発生しました。ツイッターでは「作業中のデータが消えた」など、悲鳴に近い嘆きのツイートが続出しましたが、その中で、「UPS」の必要性を指摘する投稿もありました。このUPSとは、一体何なのでしょうか。
UPSは、「Uninterruptible Power Supply」の略です。日本語では「無停電電源装置」と訳されています。 内部には、リチウムイオン電池など備えた蓄電部を組み込んでおり、雷などの天災や事故によって外部からの電源供給が突然途切れたり、電圧が急激に下がったりしても、一定時間のあいだは、このUPSが引き続き安定して電力を供給してくれます。 現在、データセンタや金融機関などの大規模システム、工場、エレベータ、医療関係の機器・システム、小規模事業者が仕事で使用するパソコンなど、たとえ一瞬であっても停電や電圧低下を避けたいさまざまな機器・システムで使用されています。 今回の停電発生日の10月12日、各種製品価格の比較サイトである価格.comでは、UPSカテゴリのページビュー(PV)が、直近1か月(9月12日~10月11日)の平均値に比べて56%増えたそうです。これについて、同サイトを運営するカカクコム広報室では、「今回の大規模停電をきっかけに、UPSへの注目度はさらに高まっていくのではないか」としています。
一方、約40機種のUPSを販売する大手メーカーのオムロンでは、今のところこのたびの停電による問い合わせや引き合いの増加はみられないとのこと。これについて、同社は、「東日本大震災以降はUPSに対する問い合わせが増え、その後、ゲリラ豪雨などもあってUPSを入れた方が良いという意識が高まっていると感じるが、今回は停電地域が限定的であり、極端に問い合わせが増えることにはならないのではないか」と述べています。 一見相反するような見解ですが、ネット上の発言なども含めて考えてみると、UPSの必要性はある程度認知されており、今回の事故はその存在感を再認識させる効果があったと言えるかもしれません。 ただし、気をつけたいのは、UPSが停電後に電力を供給してくれるのは「一定時間」だということ。オムロンによると、UPSによる電力の供給時間は5分程度。内部の電池を増設すれば多少の時間延長は可能なものの、発電機や蓄電池のように、停電後における長時間の電力供給を想定した装置ではないそうです。停電後、システムや機器を正常にシャットダウンする時間を稼いでくれるという役割の装置として捉えるべきでしょう。 (取材・文:具志堅浩二)