「日本は映画大国としてはとても例外的な国」 是枝監督が改善策を政府に提言
日本映画界の改善を訴えてきた是枝裕和監督(61)が、4月17日に政府の「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)に出席し、日本映画界の問題点とその解決策について提言した。是枝監督はフランスや韓国で自作を撮影しており、日本との「労働環境の違いに驚いた」という。官民連携によるコンテンツ産業の活性化を議論したこの会議での提言を基に、日本映画界の現状をまとめてみた。 【表でみる】映画文化・産業を取り巻く環境 ■労働時間 是枝監督は「真実」を2018年にフランスで、「ベイビー・ブローカー」を21年に韓国でそれぞれ撮影した。 「フランスは1日8時間、週休2日が絶対的なルール。仮に撮影を延長したり、土日に撮影を行ったりしたら、スタッフに膨大な賃金を上乗せして払うことになるので、絶対にしない。ギャランティーの支払いは2週に1度しっかりある」 韓国映画界については、性暴力やハラスメントへの対策を含め、「この10年で一気に改革が進み、フランスと米国のいいとこどりをしている」という現況に言及した。 「ハラスメントの予防教育や通報窓口は完備され、加害者へのペナルティーも、実質的な製作ストップや業界追放になるほど厳しい措置がとられている」 実際、「嘆きのピエタ」でベネチア国際映画祭金獅子賞(最高賞)を受賞するなど世界的に知られる韓国の巨匠、キム・キドク監督は性的暴行疑惑により、韓国映画界から事実上追放され、活動拠点を海外に移さざるを得なかった。 また、「週の労働時間は上限52時間と決められていて、毎週、主休日という必ず休まなければいけない曜日が事前に設定され、スタッフ・キャストがプライベートな用事を入れやすくなっている」という。 「ベイビー・ブローカー」の撮影期間は2カ月半で、うち撮影日数が45日、撮休が30日だったことを明らかにした上で、「これだと体調管理も完璧にできる。彼らに聞くと、ちゃんと食べられて寝られればハラスメントは起きないと話していた」。 一方、日本でも一昨年、映画界の働き方改革を目指して「日本映画制作適正化機構」(映適)が設立。この機構が定めた適正な労働時間は「準備・片付けを含め1日13時間、2週間に1度の完全休養日」。フランスや韓国と比べ、労働環境の劣悪さが際立つ。