<宇垣美里のときめくシネマ>未だ古びぬ魅力を放つ「ハリー・ポッター」シリーズで ワクワクに満ちた魔法の世界に浸る
■初めて本物の「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」を聞いた時の感動といったら! その世界に最初に出会ったのは8歳の時だった。「ハリー・ポッターと賢者の石」を母から渡された時のその重み、初めてこんなに分厚い本を買ってもらえたという喜びと自分は絶対にこの本を読み切るだろうという確信、何か素敵なことが待っているに違いないというワクワク感で胸がいっぱいになったことを今でも覚えている。その日は本を抱いて寝た。 【写真を見る】闇の魔法使いヴォルデモートの襲撃から生き残った赤ん坊として有名なハリー(「ハリー・ポッターと賢者の石」) 新刊が出るたびに発売日に本屋に駆けつけ、全シリーズを何度も読み返した(高校3年生の受験期、模試の前日になんとなく手に取ったその勢いで全巻読み返してしまい、ふらふらの寝不足で試験会場に向かったのは苦い思い出だ。もちろん結果は散々だった)。そしてその世界が実在のものとして目の前に現れた映画シリーズは、まるで夢のようで。空飛ぶオートバイに人にしゃべる帽子、飛び跳ねるカエルチョコと杖から放たれる魔法!初めて本物の「ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」を聞いた時の感動といったら!何度も読み返し、もし私宛にホグワーツからの入学案内が届いたら...なんて妄想し続けたあの世界が、海を越えたイギリスに息づいていた。 1作目である「ハリー・ポッターと賢者の石」が劇場公開されたのは2001年。何度もテレビ放映されたので、目にしたことのある人も多いだろう。意地悪な叔母夫婦のもとで育ったハリー・ポッター。ある日、ホグワーツ魔法魔術学校への入学を許可する手紙が文字通り舞い込み、実は彼の両親は有名な魔法使いで、彼自身もその能力を受け継いでいたとわかる。無事ホグワーツへと入学したハリーは、友人にも恵まれるが、やがて学園に隠された驚くべき秘密を知ることになる。 ダニエル・ラドクリフ演じるハリー・ポッターを目にした瞬間、まるで稲妻に撃たれたような衝撃を受けた。私が物語を読んで想像したハリーそっくり!エマ・ワトソン演じるハーマイオニーも、ルパート・グリントが演じるロン・ウィーズリーもそう。内容どうこう以上に、私はあのキャラクターたちが生きる世界に浸りたくて何度も何度も映画版を観返している。あんまりにも繰り返し観たから、私は一部のセリフを諳んじられるようになった。もう20年以上も前に作られた作品なのに、その魔法は未だ古びていない。「スター・ウォーズ」以前以後で宇宙の描き方が変わったように、「ハリー・ポッター」によって私たちの思い浮かべる「魔法界」というもののイメージが形作られた。その影響から離れることはもはや難しい。百味ビーンズのない魔法界とかちょっと興味ないです...。子どもたちのあどけなさも1作目の魅力の一つ。 2作目は「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(2002年)。この作品の魅力はなんといってもドビーでしょう!叔母の家に軟禁されていたハリーのもとにドビーと名乗る屋敷しもべ妖精が現れ、「ホグワーツに戻ってはならない」とハリーに警告する。なんとか学園へと戻ったハリーだったが、ホグワーツでは生徒が石にされる事件が立て続けに発生し、スリザリンの継承者によって秘密の部屋が開かれたのでは、と噂されていた。 「ハリー・ポッター」の世界に生きるのはヒト族だけではない。大きい耳と目が印象的な屋敷しもべ妖精や大蜘蛛アクロマンチュラのアラゴグ、叫ぶマンドラゴラにばかでっかいヘビ、そして不死鳥......。そのどれもが妙に現実感があって、私の知らないどこかにきっといるんだろうなあ、とうっとりしてしまう。動物好きの私としては、幼少期はハリーに憧れてふくろうが飼いたくてしかたがなかった。ドビーはかなりありがた迷惑なキャラクターではあるのだけれど、まっすぐな気持ちがいじらしく、どうしたって嫌いになれない。しかもちゃんと強い。ミステリー要素も強く、伏線も効いているのもおすすめポイント。ダークな雰囲気が魅力で、個人的にはシリーズイチオシの作品だ。 ■ハリーの世界がどんどんと広がり、大人の物語へと駆け上っていく 3作目「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(2004年)では、ついにハリーの両親の死の謎が明らかになる。ハリーの両親を裏切って2人を死に追いやったシリウスが魔法使いたちの牢獄アズカバンから脱獄した。彼はハリーの命も狙っているという。ホグワーツにはシリウスを警戒するためにアズカバンの看守である吸魂鬼ディメンターが配備され、ハリーはその力に苦しめられる。 ハリーたちも13歳、思春期が爆発している様子が微笑ましい。脱獄犯であるシリウス・ブラックのワイルドさはもちろんのこと(なにせゲイリー・オールドマンが演じている!)、ハリーたちの良き師となるリーマス・ルーピン(デヴィッド・シューリス)の枯れた魅力にぐっときた。私のナンバーワン使ってみたい魔法である「エクスペクト・パトローナム」も登場!自分の守護霊は何だろうかと思わずうっとり。今までの作品とは違い、宿敵ヴォルデモートは登場しない。しかし大どんでん返しにアッと言わされ、ハリーの世界がどんどんと広がり、大人の物語へと駆け上っていくのがわかる。 4作目は「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(2005年)。この作品は、現在赤坂でロングラン上演されている「ハリー・ポッターと呪いの子」の舞台の一つとも言える物語となっている。ホグワーツで約100年ぶりに開催されることとなった三大魔法学校対抗試合。立候補していないのにもかかわらずホグワーツの代表選手の一人となったハリーは、白い目で見られながらも課題と向き合うが、やがてその裏に宿敵ヴォルデモート(レイフ・ファインズ)の存在が浮かび上がってくる。 闇の魔法の気配がどんどんと強くなり、ハードな世界線へと突入していく4作目。宿敵ヴォルデモートとの闘いがここから本格化することになる。一つ一つの課題は「イカゲーム」もびっくりなほどのデスゲームで、もはやハリーの命の危険を感じてハラハラする一方、ダンスパーティーのシーンなどは青春の輝きに溢れている。ハーマイオニーの魅力にあてられてしまうのは、なにもロンだけではないだろう。 「ハリー・ポッター」の世界をよりしっかりと知りたければ、原作小説が一番いい。でも、火を噴くドラゴンや箒に乗って行う競技クィディッチ、動く肖像画に半透明に浮かぶゴーストたちを目撃できるのは映画ならでは。よくよく見ているとしっかりクソガキなハリー・ポッターのイギリス感溢れる物言いも私は大好き。物語はいつも夏休みから始まるので、観返すならこのタイミングがぴったり!うだるような暑さも進まない仕事もダイエットも忘れ、魔法の世界に浸ってみてはいかが。 文=宇垣美里 宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。
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