鈴鹿央士&松本穂香の関係はどうなった? 2人の距離感にしっくりきたワケ。『嘘解きレトリック』最終話考察レビュー
好きだからこそついた嘘
ただ、嘘を聞き分ける能力があるからといって、真実を見極められるわけではない。たしかに、蘭子は失恋をきっかけに家出をした。でも、恋心を寄せていた相手は、柾ではなく鈴乃だったのだ。 左右馬が、それをあっさり見抜いたのも、「やっぱり、素敵だなぁ」と思わせるポイントだった。先入観を持って他人と接することがないからこそ、左右馬の指摘は本質を突くことが多い。 家出した理由について、「わたしが幸せを願っていたのは、嘘だったんだと気づいて、お嬢さんの幸せを願えない自分が、心底嫌になったの。大切なお嬢さんにこんな醜い“本当”を見せたくないし、心にもない“嘘”を言いたくない」と明かした蘭子。 柾が鈴乃にプロポーズしようとしたときも、「もちろん! きっとうまくいくわ!」と背中を押しながら、心のなかでは「うまく行きませんように」と願ってしまっていた。 鈴乃に結婚の報告をされたときも、「おめでとう! お嬢さん!」と喜んだフリをしながら、本当は泣いていたのだと思う。好きな人には、嘘をつきたくない。でも、好きだからこそ、嘘をついてしまう。
鹿乃子は嘘の音が鳴っていると認識したということは…?
「嘘でしか幸せを願えないなら、ずっと嘘をついていればいいんじゃないですか?」 左右馬の言葉は、「その考えがあったか!」と思わされるものが多い。嘘をつくことが、必ずしも悪いわけではない。嘘をつくことでしか得られない平穏があるのなら、嘘をついたっていいのではないだろうか。 蘭子が「わたしは、お嬢さんと柾さんの幸せをずっと願ってる」と言ったとき、鹿乃子の耳には嘘の音が鳴り響いていた。ただ、その音には、“鈴乃の幸せを願いたい”という蘭子の願いが込められている。 左右馬と鹿乃子の関係性は、最後まで曖昧なままだったが、これもこれで良かったのではないかと思う。ぼんやりとしながらも、グラデーションのように濃くなっていくような関係性が、2人にはしっくりくる気がする。 蘭子に、「頑張ってね。鹿乃子ちゃん」と声をかけられ、「わたしは、助手として…」と返したとき、鹿乃子は嘘の音が鳴っていると認識してしまった。ということは…。 もしも、続編があったとしたら、左右馬と鹿乃子の距離がどうなっているのだろうか。そして、今回の報酬としてゲットした大金を、2人が何に使ったのかも気になる。 とにもかくにも、左右馬と鹿乃子の平穏な日常が続いていくことを願ってやまない。 【著者プロフィール:菜本かな】 メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
菜本かな