トヨタ、F1ワークス復帰の可能性は? 開発ノウハウは十分 29年以降であれば障害もなし
トヨタ自動車が10月11日、ハースF1チームと車両開発の分野などで業務提携を結んで15年ぶりにF1に参画することを発表した。F1には2002年から8シーズンにわたって車体、エンジンを自社開発するワークスチームとして参戦したが、リーマン・ショックの影響で15年を最後に撤退。優勝を飾れず、決勝レースでは2位が最上位だった。 【動画】ピアストリが1コーナーで攻めた!鮮烈なオーバーテイクでルクレールを捉えたシーン 静岡県小山町でトヨタ自動車の豊田章男会長は、社内カンパニー「ガズーレーシングカンパニー」の高橋智也プレジデント、ハースの小松礼雄代表を同席させて記者会見。高橋プレジデントは「『トヨタF1復帰』と思われた方がいらっしゃるかもしれないが、そうではありません」とくぎを刺した。 加地雅哉TGRモータースポーツ担当部長も「現時点でパワーユニット(PU)で復帰する予定はない」と断言するとともに、ハースがフェラーリからPUの供給を受けていることに対しても「僕たちはそれ以外のところを一緒にやっていくというかたち。フェラーリのIP(知的財産)を守るところは明確にしている」と説明。フェラーリ側ともすでに話し合いを行い、了解を得ているという。 実際にトヨタがPU供給を含めてワークス体制で復帰する可能性はないのか。フェラーリとハースとの提携は2028年まで。29年以降であれば、何の障害もない。新レギュレーションに移行する26年のPU登録メーカーにはトヨタは入らなかったものの、ル・マン24時間レースを主軸とする世界耐久選手権(WEC)、世界ラリー選手権(WRC)では専用のハイブリッドエンジンを送り込んでおり、十分に開発ノウハウはある。 2002年にF1デビューした際は当時のラリープロジェクトの前線基地だった独ケルンの「トヨタ・チームヨーロッパ」(のちのTMG、現在はTGRヨーロッパ)を拠点に、完全新規のワークスチームを送り込んだが、ザウバーを買収したアウディのようにハースを傘下に取り込むこともあり得る。 今回の業務提携の内容についても育成ドライバー、技術者の人事交流のほかにレース車両の空力開発やカーボン部品の設計・製造への参画をうたっている。さらにF1でも採用されているハイブリッドエンジンはトヨタが最も得意としている分野で企業が目指すベクトルとしても親和性はある。 WEC、WRCではチャンピオンを射止めたが、心残りはF1でチャンピオンどころか1勝もできなかったこと。章男会長は会見で「F1撤退で、日本の若者が一番速いクルマに乗る道筋を閉ざしてしまったことが心のどこかでずっと悔やんでいた」と胸中を明かしたように現在もF1再参戦の可能性を絶えず探っているといえそう。次のアメリカGPからハースのマシンにはTGRのロゴが躍る。それがコンペティターとしてのF1復帰への第一歩にもなる。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]